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Saturday, December 17, 2022

仮に「世界一有名なウサギ選手権…:山陽新聞デジタル|さんデジ - 山陽新聞デジタル

 仮に「世界一有名なウサギ選手権」があったら、表彰台は確実だろう。青い上着が目印のいたずらっ子、ピーターである▼絵本「ピーターラビットのおはなし」が英国で出版されて今年で120年になる。全23巻のシリーズは35の言語に訳され、累計発行部数は2億5千万部超。でも、もし当時「リケジョ(理系女子)」が自立し得たとしたら…?▼生みの親のビアトリクス・ポターは菌類学者になり損ねた人だ。31歳の時、キノコの胞子がどのように増殖するかについての学術論文を分類学・博物学の学会に提出したが、女性の地位はまだまだ低く、見向きもされなかったという▼ポターは情熱を注いできた研究を見限ると、観察眼やスケッチの腕を生かして創作の世界へとかじを切った。ちなみに学会は「不当な扱いだった」と1世紀後に謝罪している▼見事な転身に加え、驚くべきは、作家として成功するやいなや、彼女が作中でも描いた湖水地方の農場や田園を次々に買い取って、その自然保護に尽くしたことだ。工場などに開発されてしまうのを防ぐためだった▼出版された1902年といえば日英同盟が結ばれ、覇権を握ろうと各国が国力増強に血眼になっていたころ。再びきな臭さが増している今、弱い立場にあった女性と小さなウサギが残したものの大きさを思わずにはいられない。

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