Just Do It.
1988年にナイキが生み出したスローガンは、世界で最も有名な企業スローガンの1つとなり、多くのアスリートに勇気を与えてきた。
このスローガンを作ったダン・ウィーデンは、死刑囚のゲリー・ギルモアの最期の一言からヒントを得たと明かしている。
死刑制度が中止していたアメリカで、自ら死刑を望み、1977年に銃殺刑を執行されたギルモアが撃たれる前に呟いた言葉が「Let's do it(さあ、やろうぜ)」だった。
ナイキはこの有名なフレーズを『Don't Do It』に変更して、人種差別問題に真剣に向き合うように呼びかけている。
ナイキにとって「Just Do It」のフレーズは、「単なるコピーではなく、ナイキの哲学を体現するもの」だと秋元征紘ナイキジャパン元代表取締役社長は語っている。秋元氏がナイキジャパンの社長に就任したときに、「JUST DO IT.にも、何か日本語コピーを併用しようと考えていた」が、アメリカから来た部下に猛反対された。その部下は創業者のフィル・ナイトに相談して、秋元氏は本社があるオレゴン州までナイトに呼び出されて、「絶対に翻訳するな」と厳命された。
ナイキがそこまで強いこだわりを持つ「Just Do It」のスローガンを変えたのは、現在のアメリカ社会を揺るがしている問題がナイキにとっても見過ごすことができなものだからだろう。
ナイキがスポンサーしている多くのアスリートたちは声を挙げている。
2018年には「Just Do It」30周年記念キャンペーンにコリン・キャパニックを起用。ドアップにしたキャパニックの顔の上に、『Believe in something. Even if it means sacrificing everything.(何かを信じろ。たとえそれで全てを犠牲にするとしても)』とのメッセージを加えた。
人種差別に反対する姿勢を貫き、NFLでプレーするチャンスを取り上げられたキャパニックを大型キャンペーンの顔に起用したナイキは、保守派から叩かれ、大炎上。不買運動も起きて、株価も大きく下がった。ドナルド・トランプ大統領も「テレビ視聴率が大きく下がっているNFL同様に、ナイキも怒りとボイコットで殺されかけている」とツイート。
しかし、テニスのセリーナ・ウィリアムズやNBAのレブロン・ジェームズらがナイキの姿勢をサポートして、ナイキのキャンペーンはアメリカを2分する議論に発展した。
ナイキのような大企業が政治問題や人種問題に足を踏み入れるのは大きなリスクを伴うが、傍観して黙っているのを止めて、アメリカを変える一歩を踏み出す姿勢を明らかにした。
このナイキの姿勢には、最大のライバル会社であるアディダスも賛同。
Together is how we move forward.(力を合わせて、前へ進んで行く)
Together is how we make change.(力を合わせて、世の中を変えて行く)
とのツイートで、ナイキ公式ツイートをリツイートしている。
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May 31, 2020 at 12:46PM
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