名勝指定100周年を迎えた奈良公園
奈良公園は今年、国の名勝に指定されて100周年を迎えました。奈良公園の歴史は、1880(明治13)年に興福寺旧境内地などの風景景観を守るため、その一画を公園にしたことから始まります。
世界的に有名な社寺が点在するなど魅力ある公園ですが、その魅力は太古より自然と共生して持続可能な公園として引き継がれてきた所にもあります。そこで今回は、奈良公園の魅力をより深く知っていただくため、奈良県地域デザイン推進局次長の竹田博康氏と春日山原始林を未来へつなぐ会事務局長の杉山拓次氏に公園の魅力について語っていただきました。
鹿と自然の共生がつくる持続可能な景観
奈良県地域デザイン推進局 次長
竹田 博康 氏
竹田 博康氏
鹿がつくる景観「Deer Line」とは
もともと春日大社、興福寺、東大寺の境内地にあった奈良公園は、自然資源、歴史・文化資源、そして公園が融合した独特の景観が存在するところに価値があります。
おすすめしたいのは鹿がつくるオリジナル植栽景観「Deer Line」です。公園内の木々のおよそ2メートル以下は枝がありません。これは、鹿が立ち上がって枝葉を食べることで形成されたもので、浮雲園地や春日野園地など、見る者を誘うかのような透き通るような美しい景観が広がります。
太古から「SDGs」が続いてきた奈良公園
現在、公園内の鹿は約1200頭ほどいますが、その鹿たちが木々の葉や芝を食べ、糞(ふん)をし、その糞を糞虫たちが肥料にして芝生を肥やす、奈良公園では1000年以上前からこのような自然のサイクルが続けられ、現在にこの景観が引き継がれています。
社寺も素晴らしいですが、ぜひ公園内を散策いただき、太古からつくられてきた、いわば「まるごとSDGs」な景観をぜひ体感いただきたいと思います。
これからもわれわれは、公園が持つ植栽景観や春日山原始林など素晴らしいフィールドが広がっていることをもっと多くの方に知っていただけるよう広報や環境保全に努めてまいります。
三社池から見る若草山
東大寺南大門の見える春日野園地
春日山原始林 千年の風景を体感
春日山原始林を未来へつなぐ会 事務局長 奈良教育大学 研究員
杉山 拓次 氏
杉山 拓次氏
巨木とその木漏れ日の美しさが魅力
春日山は、841(承和8)年に勅命より狩猟伐採を禁じられた森林です。1924(大正13)年に、一部の人工林エリアを除いた森林を「春日山原始林」として天然記念物に指定。また、神域として成立した文化的背景や、春日大社と一体となった景観が高く評価され、1998年に世界文化遺産「古都奈良の文化財」の一部として指定されています。
その魅力は、数多くの巨木と木漏れ日です。年間を通じて葉が茂る春日山では、木漏れ日が美しく、秋の紅葉はステンドグラスのように陽の光を透かして眺めることができます。
当たり前の風景を次世代へつなぐこと
一方で、原始林内ではシカが若い木々を食べてしまう、台風等で大木が倒れれば、森はあっという間に崩壊してしまうというような危機にも面しています。奈良にくらす人々が千年にわたり「当たり前の風景」として見てきた春日山を次世代へつないでいくために、当会ではガイドウォーク等を通じて春日山の価値と魅力・課題をお伝えしています。当たり前に見てきた春日山をぜひ一度歩いて体感してください。
滝坂の道
春日山原始林内
協賛(順不同)
一般社団法人奈良経済産業協会、桶谷ホールディングスグループ、菅原天満宮、喜光寺、共同ハウジング株式会社、前川機械株式会社、戸尾建築設計事務所・戸尾行政書士事務所、海龍王寺、正暦寺、阿弥陀寺、大和郡山市観光協会、藤本建設、農産物直売所旬の駅トドロキタウン店、ル・ベンケイ、和北堂谷村丹後、生駒山宝山寺、とびやま不動産、張替本舗金沢屋北和店、信貴の湯、信貴山のどか村、信貴山朝護孫子寺、奈良元林院検番演舞場「伝統芸能保存会」、天理市、長岳寺、株式会社イチクリ、株式会社ICHIKEN、上牧町、ワンダーリフォーム、花nosode、タナベ、なこうど小町、大仏館
からの記事と詳細 ( 奈良公園名勝指定100周年 持続可能な公園を継ぐ - 公園まるごとSDGs|奈良新聞デジタル - 奈良新聞デジタル )
https://ift.tt/wNYfQXW
No comments:
Post a Comment