新型コロナウイルスの完全撲滅を目指すゼロコロナ政策。中国政府は国の威信をかけて都市封鎖などの取り組みを進めるが、上海ではかえって新規感染者が拡大するなど混乱もあった。上海の都市封鎖は6月1日に実質的に解除したものの、先行きには不透明感がある。ここでは中国政府の取り組みとその背景にある思惑を中心に、最近の記事をピックアップしていく。
中国政府が推し進める「ゼロコロナ」政策
ゼロコロナ政策とは、新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込めようとする方針や政策を指す言葉だ。有名な取り組みとしては中国共産党による都市封鎖(ロックダウン)などがあり、事実、2020年の半ばには中国国内の新型コロナ新規感染者はほぼいなくなったとされる。
しかし中国政府のゼロコロナ政策には強権的な行動制限が伴うことから、中国国内から不満の声が上がることも少なくない。また22年の北京冬季オリンピック後には都市封鎖中の上海で急激な感染拡大が進み、共産党政権への信頼を揺るがしている。
この記事では21年末以降の記事から、中国のゼロコロナに向けた動きを追う。
感染再拡大でも、「ゼロコロナ」を目指す中国の本気度
新型コロナの抑え込みにいったんは成功したものの、再び新規感染者が増加しつつある中国(2021年11月時点)。IT技術の活用や調査員による詳細な聞き込み、そしてそれらの情報に基づいたきめ細かな行動制限によって、今度こそ「ゼロコロナ」を目指そうとしていた。
中国ゼロコロナ政策が窮地、初期の成功「あだ」に
新型コロナが再び拡大する中国に対し、「初期の成功」のせいでオミクロン型への脆弱性が増していると指摘する専門家もいる。中国政府は「まだ十分に抑え込める」と強気の姿勢を崩さないが、2022年1月時点で感染者は急拡大しており、経済的な混乱と市民の不満がさらに広がると予想されていた。
上海ロックダウン、最大経済都市で新型コロナが広がる中国の誤算
2022年3月28日、上海で事実上の都市封鎖(ロックダウン)が始まった。これまで地元・上海政府が「封鎖の必要はない」と言ってきただけに、市民の間からは不満と戸惑いの声が上がった。
上海で行われている都市封鎖は、具体的には3月28日から4月1日まで(黄浦江の東側にある)浦東地区を封鎖し、4月1日から5日まで西側の浦西地区を封鎖するというもの(3月29日時点)。橋やトンネルもすべて通行止めとなり、バスやタクシーなどの公共交通機関もストップするという徹底した封じ込め政策だ。
泥沼の上海封鎖、「ゼロコロナ禍」にデジタルであらがう市民
4月5日に終了するはずだった上海の都市封鎖が続いている。当局は5日にロックダウン延長を発表したが、延長期限の定めはない。感染者の隔離を目的とした「野戦病院」の設置も急ピッチで進められているものの、すでに上海市内だけで感染者や濃厚接触者を受け入れることが困難になっているという。生活物資の配送も滞るなど、ゼロコロナ政策による混乱は拡大しつつあった(4月7日時点)。
住民強制退去させ隔離施設に転用も、限界近づく上海封鎖の深刻度
感染者の隔離施設が不足する上海市内では、マンションの徴用も始まっている。上海ディズニーランドに近いマンションでは当局が住民を強制退去させようとし、それに抗議する市民を「防護服に身を包んだ警察官がねじ伏せる」様子がインターネット上を駆け巡った。
他にも感染者のペットを当局が勝手に殺処分する事件も発生するなど、住民・当局双方にいら立ちと疲れが目立っている(4月19日時点)。
中国・習近平主席、民衆の怒り買う「ゼロコロナ」政策に固執する訳
ゼロコロナ政策への不満や疑問の声が広がる中、習近平(シー・ジンピン)国家主席は「ダイナミックゼロコロナ」政策をさらに強化するという。強気な姿勢の背景には、「集団免疫もなく医療制度が貧弱な中国において、ゼロコロナ政策に代わる魅力的な選択肢が存在しない」ことと「政権内部に反対勢力がおらず自身の立場が確保されている」という2つの事情があるとみられている。
最後に
強権的な行動制限を伴う中国の「ゼロコロナ」政策。一時は成功したかに見えたものの、2022年に入ってからは新規感染拡大に歯止めがかからず、上海市を中心に混乱と市民の怒りが広がっていた。上海の都市封鎖は6月1日に実質解除されたものの、先行きには不透明感が広がる。強気な姿勢を崩さない習近平国家主席がこの先どのような政策を進めていくのか、中国国内だけでなく世界からも注目されている。
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