7日行われた東京五輪の女子マラソンは、レースの前夜、スタート時刻が1時間、早まると発表された。聞いたことがない事態だし、全く予想外の出来事だ。早まったぶんだけ涼しい環境で走れるから、体への負担は確かに軽減されただろう。それにしても、もう少し早く決められなかったものだろうか。選手たちは起床時刻から変えなくてはならず、コンディショニングに苦労したはずだ。
そもそも1年間延期された大会で、五輪の開催を危ぶむ声もずっとあった。行われるかどうかが見えないレースに向けて、しっかり調整してスタートラインに立った全選手に、私は敬意を表したい。
さて、レースだが、ジェプチルチル(ケニア)の優勝タイムが2時間27分20秒。この暑さと強い日差しの中で、大したものだと思う。涼しい序盤がむしろスローペースで、日差しが強まって気温が上がっていくにつれ、逆にどんどんペースが上がったのは驚異的だ。アフリカ勢は、持ちタイムが圧倒的にいいだけでなく、暑さにも強いと実感させられた。
道幅が狭くて直角コーナーが連続する北海道大学構内の攻略法が、レース前は注目を集めた。しかし、本番レースではむしろ、この難所は多くの選手が慎重な走りに終始し、静かな展開になった。ここでスパートしてもスピードは上がらないから、考えてみれば当然のことだ。むしろ北大への出入りの前後の直線で先頭集団の人数が減ることが多く、レースが動く展開になった。この傾向はおそらく、8日の男子も同じだろう。
一山麻緒(ワコール)は8位でゴール。日本女子ではアテネ五輪以来17年ぶりの入賞という結果を出した意味は大きい。タイムは、2時間30分13秒。前半と後半をイーブンペースで走った。表彰台に立ったケニア勢は、これにプラスアルファの強さがあったということになる。一山は33キロで先頭集団から脱落したが、これが35キロ過ぎまでついていけるようになると、表彰台を争えるレベルになるはずだ。まだ24歳で、伸びしろがある。スタミナはベテランになっても向上するが、スピードは若いうちしか磨けない。今のうちに、世界のトップと戦えるスピードを身につけてほしい。
鈴木亜由子(日本郵政グループ)は19位。よく粘ったし、全力を出し切ったレースだったのではないか。前田穂南(天満屋)は33位。序盤の出入りで力を消費したのがもったいなかったが、おそらく調整に不安が残るレースだったのではないか。
日陰を求めてコースをとったり、給水所のたびに集団がばらけたりと、夏のマラソンらしいシーンも随所にみられた。8日の男子も、そのあたりがレース展開に影響してくるだろう。
武井隆次 (たけい・りゅうじ) 1971年生まれ。東京都出身。早稲田大時代に箱根駅伝で4度区間賞に輝き、うち3度が区間新記録だった。エスビー食品時代は2002年のびわ湖毎日マラソンに2時間8分35秒で優勝。その年の釜山アジア大会で3位に入った。現役引退後はエスビー食品のコーチ、監督を歴任。現在は小学生を指導している。
からの記事と詳細 ( 暑さにも強かったアフリカ勢、急なスタート時間変更で調整難しく…武井隆次の女子マラソン解説 - 読売新聞 )
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確かに
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