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Monday, November 30, 2020

コラム:イエレン長官で米通貨政策は「優雅なる無視」に回帰か - ロイター (Reuters Japan)

[ロンドン 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 通貨外交の世界では、刺激が少ないことが最も望ましい。だから米国のパートナー諸国にとって、イエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長が米大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏から次期財務長官に指名されることが決まったのは、トランプ政権の刺激に満ちた通貨政策から決別できるという意味で、歓迎すべきニュースだろう。

11月30日、通貨外交の世界では、刺激が少ないことが最も望ましい。写真は2017年12月、ワシントンで記者会見するイエレン氏(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

トランプ氏が2016年に大統領に就任する前の20年間、ロバート・ルービン氏以降の歴代財務長官は、通貨問題を質問されると「強いドルは米国の利益だ」との決まり文句を繰り返してきた。それはドルが上昇していても下落していても関係なく、もっとドルが安くなれば米国の輸出業者がメリットを享受し、物価押し上げに役立つかもしれないという局面でも、ドルを支える措置が講じられる時代が続いたのだ。

しかしトランプ政権は、そうした慣例を逸脱した。時には実に不器用なやり方で。ムニューシン財務長官は18年にダボス会議におけるオフレコの場で、ドル安が米国にとって好ましいと発言し、主要6通貨に対するドル指数を3年ぶりの低水準に押し下げた。さらに度重なったのがトランプ氏の「口撃」だ。例えば昨年には、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁(当時)がユーロ安を誘導し、貿易上で不当に有利な状況を得ようとしているとつぶやいた。これでECBの行動を止められたわけではなく、当たり前だが各中銀は自分たちの経済にとって最適な政策を推進している。それでもトランプ氏の予測不能な言動は市場関係者の動揺を誘い、主要国の間に無用の波風を立ててしまう。

確かに、通貨を巡る国際的なもめごとはトランプ氏の出現前から存在する。イエレン氏は昨年、FRB議長在職時を振り返り、金融政策変更に伴うドルの変動が20カ国・地域(G20)の懸念を招き、米国が通貨戦争を仕掛けているとの非難をしばしば耳にしたと述懐した。またFRBも他の中銀と同じく、米国経済のことを最優先に考えた政策運営を行っていくのは間違いない。ただイエレン氏が財務長官になれば、強いドルは米国の利益という以前の方針を否定して、為替レートを各国の争いの種と化す愚は避けられるだろう。

その理由はまず、イエレン氏がFRB議長として金利を決めていた局面に比べ、ドル相場への影響力を行使するのを自重するとみられる点にある。ドル相場を大きく左右する要素の1つは金融政策であり、これはイエレン氏の後任のパウエルFRB議長の権限に属する。イエレン氏としては、わざわざ対立を招くような言い回しをしてパウエル氏の仕事をやりづらくすることはない。もう1つ、イエレン氏には財政政策を正しい軌道に乗せるというずっと大きな任務が待っている。為替レートが誰も喜ばないような大荒れの様相を呈さない限り、「優雅なる無視(ビナイン・ネグレクト)」が米国の通貨政策の基本線となるだろう。

●背景となるニュース

*バイデン氏の政権移行チームは30日、イエレン前FRB議長をバイデン氏が次期財務長官に指名すると正式に発表した。

*イエレン氏は2014年、女性初のFRB議長に就任。その前まで10年間に、サンフランシスコ地区連銀総裁とFRB理事を務めた。トランプ大統領はイエレン氏の議長再任を拒否し、18年にパウエル氏を後任に据えた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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