じか箸、意外に低リスク 鍋のコロナ対策は「静かに」「換気を」
冷え込みが増し、鍋のおいしい季節になった。福井新聞(福井市)の調査報道「ふくい特報班」に、「みんなが鍋をじか箸で食べるのは新型コロナウイルス対策として駄目ですか?」と疑問が寄せられた。専門家は「食べ物を介する感染を過度に心配する必要はない」と指摘。「それより、おしゃべりで飛沫(ひまつ)が飛ぶことや換気に注意して」と基本対策の徹底を呼び掛ける。
「鍋料理や刺し身盛りは1人鍋、1人盛りに」「大皿料理は避け個々に提供する」−。日本旅館協会や日本フードサービス協会の対応ガイドラインを見ると、確かに食べ物を介した感染への配慮も見て取れる。
福井大医学部付属病院・感染制御部の岩崎博道教授は「ガイドラインは感染リスクを下げる正しい取り組み」としつつ、「心配すべきは食べ物ではなく、あくまで大勢が近くに集まることで互いに飛沫を吸い込んだり、手に付いたウイルスを取り込んでしまうこと」と強調する。
「新型コロナは呼吸器感染症を引き起こす病原体。鼻から肺にかけての気道の粘膜に付着して増える。食べ物に付着していても食道から胃に至る過程での感染リスクは低い。冬場に多いノロウイルスなど消化器感染症とは分けて考えて」と詳しい説明が続く。
さらに新型コロナは熱に弱く、鍋をじか箸で食べても感染リスクは低いという。「衛生面を考えて取り箸を使うのはいいが、多くの人が触るとむしろ接触感染のリスクが増す。鍋奉行は1人で」と助言する。
岩崎教授が勧める鍋の新様式は(1)静かに食べる(2)30分から1時間に1回、窓を開けて5分換気(3)おしゃべりは食べ終わってからマスク着用で−。冬場は粘膜が乾燥して呼吸器感染症が増えるといい「鍋は参加者の距離が近くなりがち。対策が難しければ見送るのも一つの手」という。
ただ、家族で鍋を囲む際に無言では、いかにもわびしそうだ。
「家族間では一定の感染リスクは仕方がない面がある。マスク、手洗いでウイルスを家に持ち込まない対策を徹底し、体調が悪いときは食事に加わらないなどして楽しんでほしい」と話す。(福井新聞提供)
2020年11月26日木曜日
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