開催地が不便すぎる新潟県の「大地の芸術祭」で、現代アートに関心のなかった地元の人々をどのように巻き込んでいったのか、おカネでは買えないコツのつかみ方と、日本でもブームになりそうな低コストで地方創生につながる手法を紹介する。(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)
>>記事の前編『「地方が見捨てられる」怒りから始まった新潟“大地の芸術祭”が唯一無二である理由』を読む
「地元を出た女性が戻らず人口減少」
過疎化する地方の対応は不適切なのか?
「街を出ていった若者、特に女性が戻らず人口減少の一途だ」
「電車もバスもなく、日常的な買い物もできなければ医療も受けられない。やむなく自家用車を運転し続けている高齢者が事故を起こした」
「空き家が放置されて街の見栄えが悪くなり劣化が激しい」
全国の過疎地で聞くこうした話は、悲惨を通り越して物寂しさすら漂う。
私は、兵庫県の但馬地域にある大学で教壇に立つほか、長崎市政策顧問としても、多数の地域振興プロジェクトや政策立案などに関わっている。全国有数の過疎地である但馬地域は、面積は東京都と同じくらいだが人口は東京都の100分の1ほどだ。若者は高校卒業後ほとんどが地元を離れたまま戻らず、人口流出が深刻な地域である。
地方の衰退への対応は、喫緊の課題であることは間違いない。その一方で、東京中心のメディアでは、その対応が過小評価されているようにも感じる。ネガティブなことばかり話し、批判し合っても仕方ない。成功例を皆で共有して生かすことこそ今の日本に必要だ。
私は、外交官のキャリアを離れて以降も含めて世界97カ国を訪問し、さまざまな都市と地方を見てきた。そこで確信したのが、「アートこそ地方を再生する」ということだ。次ページ以降では、開催地が不便すぎる新潟県の「大地の芸術祭」で、現代アートに関心のなかった地元の人々をどのように巻き込んでいったのか、おカネでは買えないコツのつかみ方と、日本でもブームになりそうな低コストで地方創生につながる手法を紹介する。
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