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Wednesday, July 27, 2022

コロナ前の半額も 東南アジアの高級リゾート、有名ホテルが相次ぎ値下げ:朝日新聞GLOBE+ - GLOBE+

米シカゴの新婚カップル、マリッサ(28)とショーン・カベナー(31)はこの夏、東南アジアにハネムーンに行くことを決め、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアの順で回る際は「Airbnb(エアビーアンドビー)」や手ごろなホテルに泊まる計画を立てた。ところが、そうした目的地の最高級ホテルのいくつかが驚くほど安い料金で部屋を提供していることを見つけ、もっとずっと上等なホテルに滞在することにした。

「シンガポールではAirbnbを利用するつもりだったけれど、『マリーナベイ・サンズ』が1泊2日を特別料金で提供していることを知り、そっちにした」とマリッサは言う。マリーナベイ・サンズは、新型コロナウイルスの流行前まで1泊料金が通常600ドルだったが、300ドルになっていた。「しかも、35階のすばらしい部屋にアップグレードしてくれた」。そのスイートは、空飛ぶ円盤のように3棟の高層ビルにまたがるサンズの有名な屋上プールに接続されているのだ。

タイのサムイ島では、「クリスタルベイ・ヨットクラブ・ビーチリゾート」の透き通った水域に隣接する海辺のヴィラに計280ドルで11泊した。この料金はホテルの部屋の1日当たりの料金の約半分だ。「信じられない」とショーン・カベナー。「米国の『Red Roof Inn』(訳注=モーテルチェーン)よりも安い料金で世界の最高級ホテルに滞在できる」と彼は話していた。

インフレで米国内の旅行にはとんでもない費用がかかるようになったが、東南アジアではドルが強い。たとえば、1米ドルはタイ通貨で約35バーツ(訳注=6月中旬時点)。パンデミック(感染症の大流行)前の2020年1月時点より17%もドルの価値が膨れ上がった。

ベトナム、カンボジア、タイ、インドネシアなど観光客に依存する国々は新型コロナによる孤立状態から抜け出しつつあり、最大の観光市場である中国がまだ半封鎖状態にあるうえに、この四カ国がふたたび喜んで観光客を迎えようとしていることにその他の国々もやっと気づきはじめたばかりなのだ。

電子ビザが簡単に取得でき、検疫や新型コロナ検査の要件が緩和されたにもかかわらず、バンコクの「スワンナプーム」のような空港は航空機が数珠つなぎに駐機されていて、滑走路は空っぽに見える。東南アジアの高級なホテルやリゾート、レストランは観光客を引きつけようと、ただでさえ強いドルに対し、大幅な料金値下げを試みている。

この状況は、旅行に繰り出しはじめた米国人ツーリストにとって天恵だ。

Thailand, Phuket, 2022-02. In Kata beach. Phuket sandbox zone. Photograph by Maxime Gruss / Hans Lucas. Thailande, Phuket, 2022-02. Plage de Kata, Phuket sandbox.Photographie de Maxime Gruss / Hans Lucas.
タイ・プーケット島のビーチ=2022年2月、Hans Lucas via Reuters Connect

「ホステル(安宿)にしか泊まらないつもりだった」とジュリー・ジョーンズは振り返る。彼女はこの夏、友人2人と一緒にアジア各地をバックパック旅行するためにダラスでのコンサルタントの仕事を辞めた。「でも、せっかくいくつかの有名ホテルが安い料金を提示しているのだし、ちょっと奮発して歴史をぜいたくに楽しむのも悪くないと思った」

ジョーンズと友人たちは「ソフィテルレジェンドメトロポールハノイ」で2日間を過ごした。ハノイの旧フランス地区にあり、輝きを放つアールデコ調のホテルだ。チャールズ・チャプリンがポーレット・ゴダード(訳注=チャプリンの3人目の妻)と新婚旅行で滞在し、前大統領のドナルド・トランプが北朝鮮指導者の金正恩と2回目の首脳会談をしたホテルでもある。

宝石で飾りたてたハノイっ子やパリッとしたダークスーツ姿の従業員がひしめく華やかな場所だ。そうした人たちは、サンダルに短パンで現れたジョーンズと彼女の友人たちに眉をひそめただろうか? 「スイートにアップグレードしてくれた」とジョーンズは言う。料金は1泊185ドル。パンデミック以前の通常料金のざっと半額だった。

ホテルと違って、航空運賃は値下がりしていない。この5月は、ロサンゼルスやニューヨークからバンコクへの往復運賃が1千ドル未満の便を見つけるのは簡単だった。今は最低でも2千ドル以上する。それでもユナイテッド航空(UAL)とコードシェアしている全日空(ANA)は最近ロサンゼルスから1489ドル、ニューヨークから1734ドルの安い便を飛ばしていた。

目下、東南アジアを訪れる人は、観光客気分にひたれないかもしれない。旅行先のホテルやレストランで出会う人たちは、米国内と同様、海外に行くよりもむしろ自国内を旅している人たちだからだ。記者は最近、バンコクのチャオプラヤー川沿いにある新しい「フォーシーズン」の複合施設内の「BKKソーシャルクラブ」を訪ねたが、カクテルグラスで乾杯し合ったのは、自分と同じツーリストではなく、とてもシックで社交的なタイの人たちだった。その前は、チャオプラヤー川の対岸の川沿いにあるベーカリー「カフェ・マドレーヌ」のテラスで、タイ人の子どもと母親たちがアフタヌーンティーとブリオッシュ(訳注=バターをたっぷり使ったフランス風の甘い菓子パン)を楽しんでいた。隣接するミシュランの星付きのレストラン「Yu Ting Yuan(ユー・ティン・ユアン)」では記者以外の西洋人を見かけなかった。

チャオプラヤー川の向こう岸に立つ豪華ホテル「ザ・ペニンシュラ・バンコク」は1泊135ドルだが、こちら側の「マンダリン・オリエンタル」は1泊345ドルだ。それでも、2年前と比べれば30%ほど安くなっている。マンダリン・オリエンタルはタイで最初にできた高級ホテルで、ジョセフ・コンラッド(訳注=ポーランド出身で英国の小説家)や後のロシア皇帝ニコライ2世のような人物が滞在した。

「ちょうど1920年代のパリみたいだ。当時、そこではヘミングウェーやフィッツジェラルドのような人たちが米国の中流階級の暮らしから離れて、『パリ・リッツ』(訳注=当時の高級ホテル)にたむろしていた」。先述のジョーンズはそう語った。彼女と友人たちはバリ島に向かおうとしていた。同島内陸部のウブドにある5つ星ホテル「コマネカ」に1泊147ドルで泊まってヨガリトリート(ヨガで瞑想)に没頭するか、スミニャックの1泊51ドルの「モンティゴリゾート」に滞在してサーフィンを楽しむか、どちらかを選ぼうとしていた。しかし、島全体を麻痺させる永久渋滞のような交通がいまは動いているとわかったから、両方に泊まるという選択肢もありではないかと思った。

「これは一生に一度の機会のような気がする」とジョーンズは言い、「その機会を最大限に活用するつもりだ」と話していた。(抄訳)

(Finn-Olaf Jones)©2022 The New York Times

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