齋藤太郎×佐渡島庸平のクリエイティブ対談1
大ヒットコミック『宇宙兄弟』『インベスターZ』などを手がけた編集者であり、クリエイターのエージェント会社・コルクの創業社長でもある佐渡島庸平氏。電通の営業からキャリアをスタートし、今はサントリーの角ハイボールやポケトークの仕掛け人として有名なクリエイティブディレクターの齋藤太郎氏。2人が考える、ヒットの秘訣、長く残り続ける作品を作る秘訣は何か。齋藤氏の初著書『非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術』(東洋経済新報社)の発売を記念して特別対談を行い、2人の考えを語ってもらった。
最初から読者を想定しない
齋藤:世の中のニーズを捉え、作家やアーティストに伴走しながら世の中に作品を出す。そういう意味では、広告クリエイティブと佐渡島さんがやっている編集は共通点がありそうですが、どうでしょう?
佐渡島:僕は似ていないところが多いように思います。というのも、僕は作品作りの段階でヒットさせようと考えることはほぼないんですよ。「表現せざるを得ない何か」を抱えている作家と、創作を通じてその正体を一緒に突き詰めることをしているイメージで、最後のマーケティングの段階になるまで売ることは考えない。
齋藤:作家さんの「デトックス」を手伝う感じなんですね。
佐渡島:そうやって作家が自身の生きづらさを解消し、それを作品を通じて共有すると、結果的に世の中の多くの人たちの生きづらさの解消にもつながります。主人公が居場所を見つけ、回復していく様子に、読者は自分を重ねていく。漫画『ドラゴン桜』であれば、東大を目指す学生の姿を見て、「自分も夢を持っていいんだ」「諦めずに挑戦していいんだ」と同じ学生は思えるわけです。
齋藤:作品を作る時に「こういう学生に向けて作品を作ろう」とは考えてないの?
佐渡島:あまり考えてないです。読者を想定するのは宣伝の時ですね。『ドラゴン桜』の三田(紀房)さんは比較的マーケティングから作るタイプですけど、例えば『宇宙兄弟』の小山(宙哉)さんは違う。
齋藤:小山さんに「子どもたちがワクワクするから大分県の宇宙港の話を描こう」と言っても響かないわけですね。
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