公立学校教員の残業代をめぐる訴訟で、10月1日にさいたま地裁が出した判決について、専門家から賛否の声が出ている。原告の訴えは棄却されたが、裁判長が「教育現場の勤務環境の改善を切に望む」と付言したことなどから弁護団は「画期的な判決」と評価。一方、労災事件を扱う弁護士からは「悪影響が出る可能性すらある」と厳しい意見も出る。判決をどうみるか、3人の識者に聞いた。
弁護団代表の若生直樹弁護士 敗訴だが「確かな前進」
判決は、過去の判例と比べて前進したところがあり、その点を評価すべきです。訴訟内容自体は認められませんでしたが、今回も駄目だったと諦めるのではなく「確かに前進はしたんだ」ということを発信していかなければなりません。
判決では、長時間の時間外労働があり、労働基準法に違反している状態にあると校長が認識していた場合には、注意義務違反があるとみなして、国家賠償法にもとづく賠償責任が生じることが示されました。これが、我々が「画期的な判決」と評価する部分です。
今回は残念ながら、賠償責任までは認められませんでした。ただ、最大月15時間と短いながらも、「1日8時間、週40時間」という労基法が定める労働時間を超える残業があったことを認定しました。過去に公立教員が未払い賃金を求めた訴訟では、労基法上の時間外労働はないとされてきたので、明らかに前進したと言えます。
確かに、これまでも民間の労災訴訟などでは、長時間労働で体調を崩した場合、安全配慮義務違反があったとして、国賠法上の賠償責任が認められてきました。今回の判決では、安全配慮義務違反まではいかないまでも注意義務違反があれば、賠償責任が認められる可能性が示されたと考えています。
裁判所が教育現場の実情を重く受け止め、付言でかなり踏み込んだ問題提起をしたことも、積極的に評価すべきだと思います。
少なくとも、「教員を長時間働かせれば違法になりうる」ということを裁判所が認めました。長時間労働は、現場の教員がまさに直面している課題です。「この業務は労働時間になるか」ということをしっかりと現場レベルで分析して、教員も活発に議論ができるようになると思います。
一方、確かに課題も多かった判決かもしれません。どの程度長時間の時間外労働になれば違法性が認められるかが、よく分かっていないのは不十分な点です。そもそも厳密に労働時間が管理できないという部分が、こちらの主張とは異なります。
厳しい判断基準にもとづいて、残業が労基法上の時間外労働に該当するかどうかの判断をしていることも不当だと考えています。実際に業務をしていたということは訴訟の中でも争いがなかったので、そこは労働時間であったと判断すべきだと考えています。(聞き手・森下友貴)
わこう・なおき 1988年生まれ。今回の公立小教員残業代訴訟の弁護団代表。労働問題の事件を主に扱う。埼玉弁護士会所属。
佐々木亮弁護士 「古い働き方」ありきに懸念
教員の労災認定訴訟や残業代請求訴訟にも悪影響が出る可能性があるので、とても評価できる判決ではありません。一番問題だと考えるのは、月給の4%分を支払う代わりに公立教員の残業を原則認めない教職員給与特措法(給特法)が想定しているような、「古い教師の働き方の議論」を前提に議論を進めていることです。
判決では、勤務時間外に行った業務について、校長の指揮命令の下にあったと見なせるかどうかを一つずつ判断しています。ただ、その判断の前提がおかしなものになっています。
例えば、自発的に業務に取り…
からの記事と詳細 ( 残業代ゼロで働く教師 「画期的」判決が見過ごした給与制度の闇 - 朝日新聞デジタル )
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確かに
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