対局を取材していると、棋士が途中で席を外す場面をよく見かけます。お手洗いにしては回数が多いし、やけに長いこともしばしば。両対局者がどちらもいなくなることだってあります。一体どこで何をやってるんでしょう?
私もいろいろ想像してみました。トイレじゃなかったら仮眠? でも大事な対局中に寝るかなあ。おやつ? いや、そんなに食べないですよね。
◇館内をウロウロ
気になって、対局中によく席を外すと言われる大阪在住の元竜王、糸谷哲郎八段(32)にうかがってみると、開口一番、「私はよく歩いてますね」。え! これは想定外でした。対局中は、階段や廊下を歩きながら指し手を考えるのが糸谷スタイル。「昔から考え事をするときは、お風呂か歩き回るかの2択。文章を書く仕事があるときは1日に4、5回、お風呂に入ることもあります。でも対局中は入れませんからね」
よくわかります。先輩記者の中にも、原稿に行き詰まってウロウロ、外でブラブラ、という人はいます。確かに、違う空気を吸うとアイデアが浮かぶと言いますよね。私はブツブツ独り言を発しながら考えるタイプですが……。
◇ソファで無心 多数派
そもそも対局中の棋士は規定上、館外に出ることができません。館内の自販機は使えますが、望みの品がないときは中座し、当番の奨励会員らに買い出しを頼むことはあるようです。
糸谷八段によると、歩き回るのは少数派。ソファで目をつむっている人は多いそうで、糸谷八段自身も時々、ソファで無心になると言います。「寝ることもあるんでしょうか?」と尋ねてみると、「いやー、さすがにないですね」と苦笑い。やはり愚問でしたか。
◇昔は自由
遡れば、平成の半ばぐらいまではもっと「自由」な雰囲気だったようです。対局中に記者や他の棋士が集まる控室に顔を出す棋士もいたとか。大山康晴十五世名人が日本将棋連盟会長だった頃は、多忙を極めて対局中に会長の仕事を「内職」していたと言われます。序盤の研究が進み、常に急戦になり得る現代の対局と事情が違い、ゆったりした時間が流れていたのですね。
気になるのは持ち時間。使い切って秒読み勝負になってから、急なトイレで中座しても時間は容赦なくカウントされます。囲碁の場合、「秒読み中のトイレ」では時間が減らないルールがあるのですが、日本棋院の広報担当者も「実例は見たことがありません」と言います。
時間も体調も、できて当然なのが自己管理。プロの世界はどこも厳しいものです。ハイ。(松浦彩)
◎次回は9月9日に掲載予定です。読売新聞大阪本社文化部「観る将のギモン」係にメール(o-bunka@yomiuri.com)で疑問を受け付けています。
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確かに
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