鳥などが遠くからでも巣に戻ってくるという帰巣本能。それにちなんで作家の畑山博さんは「人には帰農本能みたいなものがあるのではないか」とエッセーに書いていた。周囲を見回しても確かにそんな気がする▼畑山さん自身、春の庭、夏の庭、秋の庭-と色付きで図面を描き、さまざまな野菜を植えた。広くはない建売住宅の庭に「それでも何か野菜類が作りたかった」という。帰農の願望が募って、ついには10アールの農地を買うまでになった▼この大型連休中、各地の貸農園や市民農園で心地よい日差しを受けながら汗を流す人たちの姿を見掛けた。花や野菜の苗を販売するホームセンターなどでは、家族で品定めをして買い求める人たちの様子はいつもの年と同じだ▼畑山さんは「ぎすぎすとささくれ立つようなことばかり多すぎる町場から逃げ出して、いなかの雰囲気のある所で暮らしたい」とつづっていた。ぎすぎすとささくれ立つような…。コロナ禍のまさに今にぴたりと当てはまる表現だ▼東京など4都府県に発令中の緊急事態宣言を延長する方向だという。コロナ禍のストレスで世の中はもっとぎすぎすしそう。樹木の濃淡ある緑、白い果樹の花、菜の花の黄-。景色のきれいな5月、密とは無縁の広々とした農園で一息つきたくなる。(2021・5・7)
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確かに
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