* * * 今、日韓両政府が固唾(かたず)をのんで、行方を見守っている発言がある。1月18日に行われた文在寅(ムンジェイン)韓国大統領の記者会見だ。文氏が、徴用工判決や1月8日の慰安婦判決によって損害賠償を命じられた日本企業や日本政府の資産について、「現金化されるのは、韓日関係に望ましいことだとは思わない」と語ったからだ。 李俊揆(イジュンギュ)・元駐日韓国大使は「この発言は画期的だ」と語る。文氏はこれまで、三権分立を盾に司法判断には介入できないとの立場を繰り返していたからだ。関係筋によれば、文氏は記者会見のリハーサルを4度も行った。他の国政課題とともに、日韓関係についての発言も周到に準備されたもので、思いつきではなかったという。 日韓両政府の関係者の証言をまとめると、確かに文政権には、関係改善の意思はある。大統領自身、会見で「努力をしているなかで、慰安婦判決の問題も加わって、困惑している」と語ったように、韓国は2019年半ばごろから関係改善を模索してきた。ただ、他の政策と同様、日本に対する思い込みの激しい独善的な手法が目立ち、改善の思いは空回りしてきた。 ■日本がのめない提案 文政権は19年6月から7月にかけ、当時の趙世暎(チョセヨン)第1外務次官や鄭義溶(チョンウィヨン)大統領府国家安保室長らを日本に派遣し、徴用工判決問題の解決策を探った。ただ、その際の提案は、日本企業と韓国企業が資金を出し合って元徴用工らを救済する財団をつくるとする「1+1」案や、さらに韓国政府も加わる「1+1+α」案など、日本が全くのめないものだった。 日本政府関係者の一人は「判決を認めてしまえば、1965年の日韓請求権協定が破壊される。口を酸っぱくして説明しても、韓国側にはわかってもらえなかった」と語る。たとえ、企業や政府に実害が出なくても、いったん判決の執行を許せば、請求権協定の後に結ばれた数多くの日韓の取り決めの根拠がなくなってしまう。日韓関係の経験に乏しい文政権の幹部らに、この論理を理解してもらうのには骨が折れたという。
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確かに
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