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Monday, November 23, 2020

小難しい「科学の話」を面白く伝えるための方法 - 東洋経済オンライン

一般の人と「同じ目線」に立つことが大切だ

どうしても難しく感じてしまう科学の話。どうやったら面白く感じるのでしょうか(写真:Chinnapong /PIXTA)

コンビニのベトナム人店員が就活連敗中の理系大学生に見せた驚きの姿、シングルマザーが聞いた深海の話、原発の下請け会社を辞めて一人旅する男性……。作家の伊与原新氏が上梓した小説『八月の銀の雪』では、それぞれのストーリーの中に、さまざまな科学のエピソードが盛り込まれています。前編に引き続き、作者の伊与原氏と鳥類学者の川上和人氏による対談をお届けします。

伊与原新氏(以下、伊与原):世の中には、鉱物マニア、石オタクが結構いますよね。そういう人たちは確かに鉱物の種類や性質に精通している。プロ顔負けのレベルの人も珍しくありません。

でも中には、コレクションだけが趣味で、地球システムにおけるその鉱物の位置づけというような視点にはまったく関心がないという人もいます。川上さんは、鳥マニアではなく、生態系というシステムのなかで鳥をとらえていますよね。

川上和人氏(以下、川上):そうですね。特定の種類の鳥が好きというようなことはありません。鳥が持っている機能や、「なぜその場所にその鳥が存在するのか」という生物地理学的な視点、「飛ぶ」という鳥の特殊な能力による他の生物との違い、というような点に注目して研究しています。

伊与原:プロの研究者ならではの視点ですね。

川上:僕は飽きっぽいのでいろんなことを見てみたい、という思いもあります。ひとつのことを深くやるのは苦手なんです。

鳥だけでなく、昆虫や植物といった生態系のさまざまなパーツを研究して、それぞれの関係性を浮かび上がらせるような、よりマクロに見る研究が僕は楽しいです。

伊与原:生物研究の業界では、あちこちに顔を出すのは歓迎されるのですか。

川上:いえ、どちらかというと「落ち着いて、ちゃんとやれよ」と言われてきました(笑)。一般に研究者は1つのことを深く掘り下げることが多く、僕みたいな研究者は肩身が狭いですしね。

研究者にもさまざまなタイプがいますが、僕はいろんな要素を集め、それらをつなげて「お話」をつくるのが好きですね。

生態学者はずっと地球と生命の関係を考えてきた

伊与原:僕が大学院生の頃、「全地球史解読」という大きなプロジェクトがあったんです。そのテーマが、「地球と生命の共進化」。わざわざそううたっていることからもお察しいただけると思いますが、僕を含め地質学者や地球物理学者は、生き物のことなんてそれまでほとんど考えてこなかったんです。

川上さんの本を読むとよくわかりますが、生態学者はずっと昔から地球と生命の関係を考え続けていたんですよね。

川上:そうですね(笑)。地球という土台がないと生物は生きていけませんから。分野によって、見ているスケールが違うのでしょうね。『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』にも書きましたが、僕は小笠原諸島にある無人の火山島、西之島の調査をしています。

昨年も上陸調査を行いましたが、非常に面白いですよ。西之島は1973年、2013年と火山噴火を起こし、そのたびに溶岩に覆われた新たな大地が出現し、新たな生物相が形成されました。

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