病気の子どもに薬を飲ませると腹痛を訴えた。医者に相談すると「大丈夫。私の薬が病気と闘っているのだ」。やがて子どもは亡くなる。医者は平然と、「ほら私が言った通りだろう。私の薬と闘い、病気の方が負けたのだ」▼中国笑話集「笑府」にある。辞任を表明した安倍首相をねぎらう一方、この七年半を振り返った時、この乱暴な医者のことが頭に浮かんでしまう▼「日本を、取り戻す。」。覚えていらっしゃるか。二〇一二年の総選挙で安倍さんが使ったキャッチフレーズである。前年が東日本大震災。日本は確かに自信をなくしていた。そこへ高度成長期の日本の輝きをもう一度というその主張は魅力的に聞こえた。自民党は圧勝した▼そして現在である。コロナの影響があったものの、株価は上がった。GDPも伸びた。安倍さんの処方薬が効いたのかもしれぬが、問題はその薬の副作用である▼あの医者の薬のように命は奪わなかったまでも、安倍さんの独断的で少数意見に耳を傾けぬやり方は国民の分断を招かなかったか。不祥事を隠し、糊塗(こと)するやり方は政治への信頼を失わせなかったか。取り戻したという日本の姿が心配なのである▼存在感のある首相だったことは確かである。<昨日(きそ)夏なりき、今し秋>(ボードレール「秋の歌」)。一強と呼ばれた人の突然の退陣。先行きに不安の秋を予感しないでもない。
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