NBAが選手会とシーズン中断に向けて本格調整に入ったとのニュースが報じられたが、「トロント・スポーツチームの呪い」の恐ろしさが改めて囁かれている。
北米のスポーツ界には様々な『呪い』が存在する。
日本のスポーツ・ファンにも有名なものだと「バンビーノの呪い」だろう。1903年の第1回ワールドシリーズを制するなど、1919年までに5度もワールドシリーズ制覇を成し遂げていたボストン・レッドソックスが、1919年のシーズンオフにバンビーノのニックネームで知られるベーブ・ルースをニューヨーク・ヤンキースへ金銭トレードで放出して以降、86年間も優勝から遠ざかった。レッドソックスは何度も世界一まであと一歩と迫るも優勝を逃し続ける間に、レッドソックスがワールドチャンピオンになれないのはベーブ・ルースが呪っているからだとの説が定着した。
NFLでは人気ビデオゲームの「マッデンNFL」の表紙に起用された選手が翌シーズンは大不調に陥ったりケガをしたりする「マッデンの呪い」、スーパーボウル開催地のチームがスーパーボウルに出場できない「スーパーボウルのジンクス」などがある。
アメリカのスポーツ界全体で有名なものとしては、人気スポーツ週刊誌の「スポーツ・イラストレイテッド」の表紙に抜擢された直後に調子が落ちる「スポイラ・ジンクス」が挙げられる。
今回、新たに浮上してきたのが「トロント・スポーツチーム」の呪い。
メープルリーフスが初優勝した翌年にスペイン風邪の流行でスタンレーカップが中断
トロントには1917年に創設されたメープルリーフス(NHL)、1977年に誕生したブルージェイズ(MLB)、1995年にできたラプターズ(NBA)と3つの4大スポーツリーグに属するチームがある。
トロント最古のメジャースポーツチームであるメープルリーフスが創設されたのはNHL設立と同じ1917年。それ以前には、NHA(ナショナル・ホッケー・アソシエーション)というカナダのホッケーリーグがホッケー界最高峰のリーグと言われていたが、NHAの会長を務めていたトロント・ブルーシャツのチームオーナーが自チームに有利になるようにリーグを運営しているとして、他チームのオーナーたちと対立していた。
他チームのオーナーたちは結束して、ブルーシャツの代わりに新しく作られたトロント・アリーナズ(メープルリーフスの前身)を加えてNHLを設立。メープルリーフスはチーム創設1年目ながらもNHL初年度の1917-18年シーズンを制して、スタンレーカップ優勝を果たした。
そして迎えた翌1918-19シーズン。メープルリーフスはリーグ3位に終わり、スタンレーカップ連覇を逃す。当時のスタンレーカップはNHL(NHA)とPCHA(太平洋岸ホッケー協会)の優勝チーム同士で争われ、19年のスタンレーカップはNHL優勝チームのモントリオール・カナディアンズとPCHAチャンピオンのシアトル・メトロポリタンズの間で争われるはずだった。
しかし、スタンレーカップ開催期間中に世界中でスペイン風邪が流行。カップ戦は2勝2敗1分で第5戦まで行われたが、カナディアンズの3選手がスペイン風邪に感染したためにファイナルは中断。中断から4日後にカナディアンズの選手が死亡したために優勝チームなしとしてシーズンは終了した。
スタンレーカップは1893年から始まったが、カップ戦が中断して優勝チームが決まらなかったのはメープルリーフス初優勝翌年の1919年が初めてのことだった。
ブルージェイズが2連覇を成し遂げた翌年にストでワールドシリーズが中止に
エクスパンションチームとして1977年に誕生したブルージェイズは、創設から6年連続地区最下位に沈み、苦戦が続いていた。
1989年に世界初の開閉式ドーム球場のスカイドーム(現ロジャーズ・センター)が完成するとチームも強くなり、89年は地区優勝。91年にはメジャー初の年間観客動員数400万人を突破して、人気面でもトップクラスとなり優勝への準備が整った。
勝負の年と判断した92年は優勝請負人のジャック・モリスと大ベテランのデーブ・ウィンフィールドを補強。地区2連覇を果たして、リーグチャンピオンシップでもオークランド・アスレチックスを撃破して、ワールドシリーズが初めてアメリカ国外で開催された。ブルージェイズはワールドシリーズでアトランタ・ブレーブスを下して球団初のワールドチャンピオンに輝くと、翌93年もフィリーズを破って2連覇を達成。だが、問題はその次の年に起こった。
94年シーズンのブルージェイズは勝率5割前後をウロウロとして、ワールドシリーズ3連覇に黄色信号が灯っていた。メジャーリーグでは選手会側とオーナーたちの労使交渉が決裂。シーズン途中の8月12日に選手側がストライキに突入して、プレーオフとワールドシリーズを含むそれ以降の試合は中止となった。
第一次と第二次世界大戦中でも開催されたワールドシリーズが行われなかったのはナショナルリーグが対戦拒否した1904年以来2度目のことだった。
ラプターズが初優勝した翌年にコロナでシーズンが中断、このままシーズン中止の可能性も
トロントのメジャー・スポーツチームで三男坊に当たるラプターズが生まれたのは1995年。最初の3シーズンは大きく負け越したラプターズが変わったのは、1998年に新人のビンス・カーターが加入してから。1999-2000年シーズンに初めてプレーオフ出場を果たすと、翌シーズンはプレーオフ2回戦まで勝ち進んだ。
2014年に球団2度目の地区優勝を果たすと、そこから地区3連覇してイースタン地区の強豪となる。2018-19シーズン前にカワイ・レナードの補強に成功したラプターズは、イースタン・カンファレンス決勝戦で第1シードのミルウォーキー・バックスを撃破して球団創立24年目にして初となるNBAファイナルに出場。NBAファイナルでは大本命のゴールデンステイト・ウォリアーズをアップセットして、球団初のNBAファイナルを制覇した。
今季のラプターズはシーズンが中断した時点で46勝18敗の成績で、東カンファレンス2位と健闘しているが、レナードが抜けたチームは昨季よりも戦力が落ちていて2連覇は難しいと言われている。
トロントのチームが(初)優勝した翌年にシーズンが中断して、チャンピオンシップゲームが中止となるジンクス
スタンレーカップを争う試合が初めて行われた1894年から昨季までの126年間で、スタンレーカップが中止・中断となり優勝チームが決まらなかったのはスペイン風邪のパンデミックの1919年とロックアウトでNHLのシーズンが中断した2005年の2回だけ。
1903年に始まったワールドシリーズは昨季までの117年間で中止となったのはナショナルリーグが対戦を拒否した1904年とストライキでシーズンが中断された1994年の2回。
NBAファイナルは1947年に始まった前身のBBAファイナルから数えて、昨季までの73年間で一度も中止となったことがなく、新型コロナウィルスのパンデミックで、もし今季ファイナルが行われないと74年目にして史上初となる。
この3つを合わせると合計317シーズンでチャンピオンシップゲームが開催されないのは5回。その5回中3回は前シーズンにトロントのチームが優勝している。
トロントのチームが初優勝して、連覇が不可能になるとチャンピオンシップゲームが中止となる。これが「トロント・スポーツチーム」の呪いだ。
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April 06, 2020 at 09:05AM
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