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Friday, February 9, 2024

さや香東京進出 有名な「不仲コンビ」の要素をどう生かすかが勝負の分かれ目 - goo.ne.jp

この度東京に進出するお笑いコンビさや香

『M-1グランプリ』で三度の決勝進出経験を持つ実力派漫才師のさや香が、活動拠点を東京に移すことを発表した。彼らは大阪にある「よしもと漫才劇場」の中心メンバーとして活動しており、『せやねん!』(MBS)、『さや香の違和館ヤバない?』(テレビ大阪)など在阪局のレギュラー番組を持っている。

 大阪でも多くの仕事をこなしているさや香がこのタイミングであえて東京進出するのは、さらなるステップアップのためだろう。

 彼らにとって最初のチャンスだったのは2022年の『M-1』直後である。このとき彼らは準優勝という立派な結果を残していたからだ。それを武器にして、東京のバラエティ番組を渡り歩いていくこともできそうな状況ではあった。

■さや香の露出はそれほど多くなく

 だが、実際にはそうはならなかった。優勝したウエストランドがバラエティ番組に出まくっていたのに対して、さや香の露出はそれほど多くなかった。その大きな理由は、彼らが大阪を拠点にしていたことだろう。大阪でのライブやメディア出演の仕事が多かったため、東京のテレビに積極的に打って出ることが難しかったのではないか。

 今回、満を持して東京に出ていくことで、彼らにとっては新しい可能性が広がることになるだろう。

 さや香が東京進出を発表した直後、ビスケットブラザーズ、kento fukaya、滝音、今井らいぱち、生ファラオ、ソマオ・ミートボールも東京進出することが明らかになった。『キングオブコント』チャンピオンのビスケットブラザーズ、『R-1グランプリ』ファイナリストのkento fukayaをはじめとして、名の知れた実力者たちが続々と東京に出てくることになる。

「大阪芸人は二度売れなくてはいけない」という言葉がある。大阪で芸人としての活動を始めた場合、まずは大阪の劇場やテレビ・ラジオを主戦場とすることになるため、そこで結果を出すことを求められる。

 しかし、大阪で積み上げた実績は、関西以外の地域には全く伝わらない。そのため、あるタイミングで東京に出ていって、全国ネットのテレビ番組などに出演することで、もう一度結果を出さなければいけないのだ。

 大阪でも東京でも、ライブやテレビに出るという意味では、やること自体が極端に変わるわけではない。しかし、市場が変わることで、求められていることが微妙に変わったりする。その違いに適応できるかどうかというのが、東京進出を成功させるための鍵となる。

 今の時代、大阪の笑いと東京の笑いにほとんど違いはない。だが、やはり風土の違いというのは多少あるような気がする。私の知る限り、大阪の若手向けの劇場は、良くも悪くも純粋なネタ至上主義、面白さ至上主義のようなところがある。芸人同士の激しい競争があり、その中でネタを磨き合い、センスを競い合う。

■東京は「キャラ芸人」が多い

 東京のお笑いライブシーンでも基本は一緒なのだが、テレビなどのメディアとの距離が近い分だけ、キャラクター的な要素が求められやすいところがある。いわゆる「キャラ芸人」が多いのが東京の特徴だ。かつて千鳥のノブがオードリーの2人に対して「春日のような芸人は大阪からは出てこないと思う」と語っていたのが象徴的である。

 いわば、大阪はお笑いだけの真っ向勝負。東京はキャラクター、特技、人間性などの総合力の勝負。戦い方のルールが少しだけ変わるので、そこに適応しなければいけない。

 今回の上京組の中では、ギャグを得意とするソマオ・ミートボールは、最も東京に向いている芸風だという気がする。さや香は不仲コンビとして有名なので、その不仲ぶりをバラエティ番組の中でどうやって面白い形で生かせるか、というのが勝負の分かれ目になりそうだ。

 芸人が東京に進出するのは、その人の新しい魅力が引き出されるチャンスでもある。今回の上京芸人の中から次のスターが生まれることに期待している。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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