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Saturday, February 24, 2024

琉球支配下で広く深く浸透、奄美の“神様”は今…有名な「ユタ」に占ってもらった 迷える人の良き相談所だった | 鹿児島のニュース - 南日本新聞

祭壇の前で相談を受けるユタの栄サダエさん=奄美市笠利

祭壇の前で相談を受けるユタの栄サダエさん=奄美市笠利

 鹿児島県・奄美群島と沖縄県には祭祀(さいし)や住民の生活に深く関わり、信仰対象とされた「ノロ」と「ユタ」がいた。「ノロ」は、奄美を15世紀半ばから150年ほど支配した琉球王国が置いた女性神職を示す。「ユタ」は霊的な能力を持ち、悩みごとの相談を受けるなど身近な存在だった。人々があがめた“神様”は今、どうしているだろう。

 奄美市笠利町佐仁集落の民家に入ると、鏡や馬の置物、果物などが並ぶ大きな祭壇前に招かれた。白衣の神衣(かみぎん)に勾玉(まがたま)をまとった女性が祭壇に酒をささげて一礼。すると間髪入れずに振り向き、語り始めた。「あなたの家系は…」「大きな買い物は6月にした方が良い」。神の“教え”を矢継ぎ早に告げられ、面食らった。

 有名なユタ・栄サダエさん(82)を先日訪ね、占ってもらった。仕事や健康運などを恐る恐る尋ねた。「仕事がうまくいくかはあなたの頑張り次第。50、60歳になっても大丈夫。健康も問題なし」と言われ、ほっとした。相談時間は約1時間。いい当てられたことも多く、不思議な気分になった。

 栄さんは2人を子育て中の27歳のとき夫を亡くした。3年後、原因不明の病で2カ月間寝たきりに。同市名瀬の名高いユタに相談すると、神を拝むよう勧められた。以前から霊的な能力があると言われていたらしい。自宅近くの海岸から馬に導かれ、神が降臨するとされる聖地に赴く儀式を行い、30歳でユタになった。

 奄美大島ではユタの評判を口づてに聞きつけ、困りごとや悩みを打ち明ける住民が少なくない。親族関係やトラブル、商売など内容はさまざまだ。ユタの家近くの商店には、相談時に必要な焼酎と塩の「神様セット」がある。

 栄さんの元には、島内はもちろん全国各地から訪れる人が絶えない。「告げたことを受け止めるかどうかは相談者次第。少しでも良い方向に歩んでいけるように願っている」。身近な困りごとを解決し、迷える人々の背中を押し続けている。

◇「ノロ」は激減、後継おらず最後の一人に…

 奄美大島には、ノロの住まい「トネヤ」や祭事の場だった「アシャゲ」が今も残る。ただ高齢化したノロが引退してしまったり、後継者がいなかったりして、関連行事は近年、急速に姿を消している。

 大和村名音では大昔、南から来たノロが「神をまつらないと災いがある」と告げた。その後ノロを置き、集落の無病息災を祈るクガツクンチ(旧暦9月9日)を続けてきた。

 かつて各種行事を取り仕切っていた複数のノロは高齢化などで減少。現在、名音出身で鹿児島市在住の三島竹子さん(77)だけになった。行事の度に帰省し、執り行う。「まさか自分が最後の一人になるとは。私の後継者はいない」と寂しそうだ。

 儀式の際にノロを手伝う世話役「グジ」の福山東剛さん(72)は「将来ノロがいなくなったとしても、儀式を一部省略するなどして何とか引き継ぎたい」と話した。

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