美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
ムンクの「叫び」、本当は「叫んでなかった」!?
さぁ! いよいよご対面ですね! こちらが「叫び」です!
──おおぉ~! これがかの有名な「叫び」…。やっぱりすごい迫力ですね! ははっ、叫んでる、叫んでるっ(笑)。
えっ、今なんと?
──え…。ただタイトル通り「叫んでる」って言っただけですよ?(汗)
え、誰が?
──え…。この男の人が…ってもう、なんなんですか~?
あはは、すいません(笑)。実は、これは本当に知られていないことなんですが、この男の人は「叫んでる」んではないんですよ。
──ええぇ!! いやいや、今回ばかりは譲れません! どう見ても叫んでいるじゃないですか!!
と、思うでしょ? じゃあこの人と同じポーズをしてみてもらえませんか?
──同じポーズ? はい、こうですよね! ほっぺたを押さえて口をみょーんと開けて…白目でも剥いちゃおっかな!
ごめんなさいっ! 間違いです!
──え~!? もう全然わかりません! どういうことなんですか~?(涙)
(笑)。実はですね、ムンクには少し変わった生い立ちがあるんです。
5人兄弟の2番目に長男としてノルウェーに生まれたムンクは、5歳のときに母が亡くなり、14歳のときに姉が亡くなってしまいます。父はそのことから狂信的なキリスト教の信者となり、ムンクを本当に厳しく育てたそうです…。
──辛い少年時代だったんですね…。
はい。そして、そんな経験からムンクの関心は人間の内側に向くようになり、まるで幻覚のような、現実には起こりえない歪んだ世界を描く画家になっていったんです。
そんな彼が30歳の頃に描いた作品が「叫び」です。
──(ゴクリ…)
ムンクはこの絵が描かれたときの状況を記した日記を残しています。それによると、ムンクは友人二人と橋の上を歩いていました。
すると、突然めまいがして、意識が朦朧とする中、空が真っ赤な血の色のように染まっていたそうです…。
あ、これはあくまでもムンクの頭の中の話ですよ。だから奥にいる友人二人は先に行っちゃったんです。
──あれ! こんなところに人がいたんですね!(汗) 全然気が付きませんでした…。
そして、ムンクがその光景に圧倒されていると、遠くにあった海の方から大地を貫く、果てしない叫び声が聞こえて来たそうです!! それを聞いたムンクは恐ろしくなって、耳を塞いで立ち尽くした!! ということだそうです。
──えっ…ってことは、このムンクはほっぺたを押さえているんじゃなくて…。
耳を塞いでいるんです。絵の奥の方に見えるのが海ですね。つまりここから聞こえてくる「叫び」を聞かないようにしているんです。
──なんとぉぉぉー!!! もうずっとこの人が叫んでいるのかと…。多分みんなそう思ってますよ。でも、なんでそんなに誤解されているんですか?
やっぱりこの絵は文脈と切り離されて、あまりにも知られすぎていますからね。
「叫び」というタイトルを知ったとき、誰も疑うことなく「この人が叫んでいる」と思うんじゃないでしょうか?
──確かに…。でもそれなら、タイトルを「叫びを聞かないようにしている私」とかわかりやすくしたらいいのに…。
う~ん、それはそれでくどいですね…(笑)。
──くどいな…。「叫び」でいっか(笑)。
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)
からの記事と詳細 ( ムンクの「叫び」のすごさが「ぶっちゃけ、わからん」ので詳しい人に聞いてみた - ダイヤモンド・オンライン )
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