「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が話題を呼んでいる。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な「戦争・反乱・革命・紛争」を地域別にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。今回は、本書の内容を一部抜粋しながら、古代ローマの偉人カエサルについて著者に教えてもらった。
「ブルートゥス、お前もか」で有名なカエサル
みなさんはカエサルという人物を知っていますか?
「皇帝」を意味する「カイザー」の語源になったとされる人物ですね。「賽は投げられた」「ブルートゥス、お前もか」なんて名言も多い彼ですが、今回はそんなカエサルが一体どのような人物だったのかについてみなさんにご紹介したいと思います。
「ガリア遠征」により、カエサルがライバルを出し抜く
前1世紀、ローマでは3人の有力者がいました。カエサル、ポンペイウス、クラッススの3人です。
彼らが密約を結び、元老院と対抗しようとしたのが、第1回三頭政治でした。
しかし、次第に3人はそれぞれが自分の力を誇示しようと、さまざまな動きを進めていきます。
そこで特に目立った動きをしたのがカエサルでした。彼は、名声を高めるべく、自らの軍隊を連れてガリア遠征に向かいました。ガリアとは、現在の北イタリアやスイス・フランス・ベルギーなどを含む地域のことです。ここには主にケルト人が住んでおり、ローマ人は彼らのことをガリア人と呼びました。当時、ガリア南部はすでにローマの属州となっていましたが、北部はまだ平定できていませんでした。
そんな中、ガリアの地方長官に任命されたカエサルは、まだローマの影響力を及ぼせていなかったガリアへと遠征し、ローマの勢力拡大、ひいては自らの名声の向上を図りました。しかし、この遠征は元老院からの承認を経ておらず、事実上権限外の行為でした。そこでカエサルは、「ガリアの地を平定してガリア人と手を組み、さらに北方に住む勇猛なゲルマン人の侵攻に備える」などと弁明して、自らの行為を正当化したのです。
ガリア北部の反ローマ勢力とカエサル率いるローマ軍との戦いは数年にわたりました。この戦争の様子は、カエサル自身によって『ガリア戦記』という著作にまとめられています。文学作品としても評価されているこの作品は、カエサルが元老院を含む有力者へ戦況を報告し、自らの功績を顕示する意図もあったとされます。
この戦争では、カエサルの知略が光ったアレシア包囲戦が有名です。ガリア軍に対し、兵力で劣っていたローマ軍は、アレシアの地に全長15キロにわたって櫓(やぐら)・壕による包囲網を形成して戦い、ガリア軍を降伏にまで追い込みました。ガリア遠征を見事に成功に導いたカエサルは、狙い通りに名声を高め、ライバル2人を出し抜くことに成功したのです。
カエサルの独裁がスタート
一方、残る2人のうち、クラッススはパルティア(古代イランの王朝)へ遠征しました。カエサルへの対抗心を燃やしたのでしょうが、パルティアはかなりの強国で、たやすく倒せる相手ではなく、遠征に失敗したクラッススはここで戦死してしまいました。こうして第1回三頭政治は終了します。
さらにカエサルは、ガリア遠征からの帰路、そのままローマのポンペイウスのもとへ進軍しました。このとき、ルビコン川を渡る際にカエサルが言ったとされる「賽は投げられた」というセリフはあまりに有名です。ポンペイウスは慌ててローマからエジプトに逃げて次のチャンスをうかがいますが、そこで暗殺されてしまいました。
こうしてローマには、カエサル一強の時代が訪れました。
事実上の独裁者となった彼は、さまざまな改革を実施していきます。その一つがユリウス暦の導入です。当時、エジプトで使われていた暦を参考にしたもので、一日を24時間、一年を365日とし、4年に一度の2月に閏年を設けるという暦です。現代で使われているのはグレゴリウス暦ですが、これはユリウス暦を16世紀に改善したものなのです。
しかし、カエサルの時代もそう長くは続きませんでした。彼は決して横暴で悪い独裁者ではありませんでしたが、前44年、独裁ではなく共和政を優先すべきだと考える人物によって暗殺されてしまいます。ここでカエサルが腹心の1人であったはずのブルートゥスに最期に放ったとされるのが、「ブルートゥス、お前もか」という名言です。
ちなみに、そんな彼の容姿は薄毛だったのだとか。なのに女性からは意外とモテていたと言われています。
東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。
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