出勤前に見る朝の情報番組や、家事の合間に“ながら聴き”するラジオ。メディアの人たちの言葉が聞き取りやすいのは、「滑舌」を鍛えているからかもしれません。私たちの日常生活でも、ハキハキと話すことを求められる場面は多いもの。もしプロのように滑舌良く話せたら、自信を持って人と接することができ、コミュニケーション能力そのものも向上する可能性だってあります。
そこで今回は、元日本テレビアナウンサー・魚住りえさんに、手軽に始められる滑舌を良くするためのプロのノウハウを教えてもらいます。現在はフリーランスアナウンサー、ボイス・スピーチデザイナーとして活躍する魚住さんに、滑舌のトレーニング方法から聞き取りやすい話し方のコツまで、たっぷりと伝授していただきました!
目次
魚住りえ(うおずみ・りえ)さん
「滑舌が良い」ってなんだろう?
そもそも「滑舌が良い」とは、具体的にどういう状態のことを指すのでしょうか。魚住さんの思う答えを聞かせてもらいました。
魚住さん 「私が思う“滑舌が良い”という状態は、以下の2つを満たしているとき、でしょうか。
- 一音一音、一拍一拍がクリアでしっかりと聞き分けられる
- 途中でかんだり言いよどんだりすることがなく、言い直しもなく、滑らかに話せている
『活舌』と書くこともあるそうで、まさにいきいきと話せていることが重要かもしれませんね」
滑舌の鍵を握る音のクリアさには、“母音”が大きく関係していると魚住さん。某劇団がセリフを母音に変換して練習するというのは有名なお話ですが、魚住さんも話す時は常に文字の奥にある「あいうえお」の母音を意識して発音するそう。母音をきれいに発音するには、口をしっかりと動かす必要がありますが、そういえば、マスク生活の影響で口元の筋肉が衰えているような……?もしかしたら私たちの滑舌は、以前よりも悪くなっているかもしれません。
魚住さん 「“見られている意識”というのはすごいもので、『マスクを外したら口角がへの字になってショックを受けた』なんていう話を耳にします。口周りの筋肉は滑舌にも重要なので、マスク生活のうちに、もごもごとした話し方になっているかも。滑舌が良くなると元気で前向きな印象を与えたり、話を聞き取りやすくなってコミュニケーションが円滑になったり、良いことがたくさんありますよ!」
滑舌が悪い人によくある習慣チェックリスト
マスク生活の他にも、滑舌が悪くなる原因は多岐にわたっているようです(編集部調べ)。以下のポイントに当てはまるものがあるかどうか、セルフチェックしてみましょう。
- □ パソコン仕事などが続いたせいか、姿勢が悪い
- □ 声のトーンが低いと言われがち
- □ 話す時に緊張して、つい早口になってしまう
- □ 呼吸が浅いのが気になってきた
- □ 口をあまり動かさずにしゃべることが多い
- □ 笑顔で話せていないかもしれない
滑舌をスムーズにしたら、人間関係もスムーズになる
アナウンス業のキャリアを生かし、ボイスデザイナーやスピーチデザイナーとしても活躍する魚住さん。滑舌が良くなることで、仕事やプライベートの人間関係にも良い影響があると話します。
魚住さん 「コミュニケーションは、人間関係づくりの基本です。言葉が聞き取りやすいということは、相手にストレスなく話が伝わるということ。こちらの話がスムーズなら、相手も気持ちよく言葉を返してくれるので、円滑なコミュニケーションが生まれます。いまさら話し方の練習をするなんて……と思われるかもしれませんが、話し方が変われば、自分という人間の見え方が変わるんです」
「魚住式スピーチメソッド®︎」の生徒さんの中には、話し方が上達したことで婚活や就活がうまくいった、という方もいるのだそう。また最近ではスマートスピーカーなど、デジタル機器を音声で操作したり、テキストを音声入力することも多くなりました。
魚住さん 「いつも夫がテレビやロボット掃除機に音声で指示を出しているのですが、10回言っても反応しなくて、私が1回言うとちゃんと作動します(笑)。こういうときも滑舌って大事だなと思いますね」
こうしてお話を伺っている最中も、魚住さんの言葉はとっても聞き取りやすくて、逐一感動してしまいます。では早速、魚住さんのトレーニング方法を教えてもらいましょう。
魚住さん直伝。3つのトレーニングで滑舌を鍛え上げる!
高校生の頃、放送部に所属していたという魚住さん。以来、さまざまな滑舌トレーニングを積んできたのだそうです。貴重なノウハウをシェアしていただきます。
魚住さん 「きれいに発音することはもちろんですが、脳のスピードについていける口を作っておくことも大切。発言中にかんだり詰まったりするのは、口の運動が足りていないのかもしれません。頭の中に生まれたアイデアをきちんとアウトプットするために、フィジカル面もしっかり鍛えておきましょう」
まずは自分の滑舌をチェック
魚住さん 「早口言葉を使って、今の自分の滑舌レベルを測りましょう」
まずは自分の現実を知る時間。レベル別に3つの早口言葉を教えてもらいました。ちなみに早口言葉の練習は脳のトレーニングとしてもおススメで、頭の回転も速くなるそうです。さあ、まずは口に出して言ってみましょう。もう口の筋肉が引きつりそうになりますよ。
滑舌力チェックにおススメ! レベル別の早口言葉
- 【初級】赤パジャマ 黄パジャマ 茶パジャマ
- 【中級】この釘は引き抜きにくい釘だ
- 【上級】新人シャンソン歌手総出演 新春シャンソンショー
滑舌トレーニング①:毎日1分朗読&録音
魚住さん 「朗読は、誰かに聞かせるように文章を読むこと。アナウンサーになった気分でしっかりと感情を込めて、抑揚をつけながら読むことが重要です。読んだらスマホなどで録音して、自分で聴いてみましょう。初めはきっと打ちのめされてしまうと思いますが(笑)、体づくりをする人が必ず鏡を見るように、自分の話し方に向き合うことはとても大切。朗読は毎日1〜3分間やってください」
このトレーニングの肝は、他人に伝わるように話そうと工夫する癖をつけること。いわば、“話す筋肉”を鍛える筋トレなんだとか。また、完成された文章を読むことで自然に語彙(ごい)力が高まり、スラスラと言葉が出てくるようになる効果まで期待できるそうです。
魚住さん 「語彙力の多さは伝えたいことを言語化する力を高めてくれます。私はナレーションの仕事をすると、読んだ文章の文体やリズムが自分に乗り移って、スムーズに話せるモードになるのですが、朗読でも同じ効果が得られます。現代の言葉を取り入れたいので、読むのは現代文、明治・昭和以降の小説、ネットのニュース記事などが良いです」
滑舌トレーニング②:舌根の筋トレ
今度はフィジカルにアプローチ!舌の付け根、つまり舌根の筋肉を鍛える体操です。
魚住さん 「発音ってすごく舌を使うんですよ。タ行、ラ行は特によく使いますし、サ行は舌を奥に引っ込めないときれいに発音できません。毎日少しずつ鍛えていきましょう」
毎日続けてきれいな発音に!舌根の筋トレ
①頬に空気を入れてふくらませた後、頬のお肉を吸う(10回繰り返す)
②「ひょっとこ」のように唇をとがらせ左右に動かす(往復10回)
③舌を突き出し左右にスライドした後、上下に動かす(それぞれ往復10回ずつ)。最後に口を閉じたまま、口の中で舌をぐるっと回転させる(左右4回ずつ)
毎日継続すると、きれいな発音を生み出す筋肉が発達します。さらに二重あごやフェースラインのリフトアップにも効果的だそう。
滑舌トレーニング③:発音練習(母音とパマタカラ体操)
発音のポイントは、なんといっても母音。母音を意識するだけで、言葉が格段に明瞭に聞こえるようになります。日本人は「う」と「お」が苦手なので特に意識が必要なのだとか。2種類の練習方法を教えてもらいました。
母音の練習
「あおあお」「いういう」「うえうえ」「えおえお」など2つの母音を組み合わせて繰り返し発音する。
魚住さん 「母音は発音する時の口の形をしっかり作って、形状記憶のように口に覚えさせましょう。『あ』は大きく口を開けて、『い』は口を横に引っ張り、『う』は口をしっかり前に突き出す、『え』は笑顔で、『お』は口を縦にしっかりと開いて発音します」
パマタカラ体操
「パパパパパ」「マママママ」「タタタタタ」「ラララララ」を3秒ずつ発音した後、「パマタカラ」を10回繰り返して発音する。
魚住さん 「ちょっと耳なじみのない言葉かもしれないので、“パパとママの宝”と覚えてください。どの言葉も、口角を上げて舌に力を入れた状態でないと発音することができませんから、良いエクササイズになります。口の筋肉が弱まると足腰の筋肉も弱まるので、エイジングケアにも良いですよ」
滑舌が良くなれば、自信が湧いて、人生が変わるかも。今日からあなたも口角を上げて、滑舌を意識してみませんか?
(掲載日:2023年6月12日)
写真:山﨑悠次
文:井上麻子
編集:エクスライト
自分の滑舌を確認してみよう。文字起こしアプリ「レコーダー」が搭載されているGoogle Pixel
滑舌向上によってもたらされるメリットの一つに、「音声認識機能をより快適に使用できるようになる」といった効果も期待できますよね。
Google Pixelには、録音した音声がテキストになる、自動文字起こし機能がある録音アプリ「レコーダー」が搭載されています。トレーニングの成果を、まずは文字起こし機能を使って確かめてみては?
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