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Wednesday, September 28, 2022

<社説>旅行割全国拡大 公平な支援が前提だ - 東京新聞

 政府は「全国旅行支援」を、十月十一日から十二月下旬まで実施する。旅行先が限られていた「県民割」の拡大版で観光支援による経済活性化が狙いだ。

 利用者は一泊あたり八千円を上限に宿泊代の40%の割引を受けられるほか買い物などに使えるクーポン券ももらえる。人の流れの増加による経済効果が期待できる上、コロナ禍で打撃を受けた観光産業の救済が急務であることに異論はない。

 ただ国による観光支援には課題も多い。二〇二〇年に始まったGoToトラベルでは、地域や宿泊施設の規模などにより格差が生じ支援が行き渡らないケースも出た。真に助けを求めている小さな民宿などにも支援が回らなければ対策の意味はない。

 有名な観光地や、大手旅行事業者とのパイプを持つ競争力の強い宿泊施設だけが潤う構図は避けねばならない。観光庁と自治体は緊密に連携し、支援が隅々まで届く仕組みを構築すべきだ。GoTo事業で相次いだ不正利用防止にも厳しい姿勢で臨んでほしい。

 旅行支援に対し、国はGoTo事業と県民割のために確保している予算を出す方針でその額は八千億円超に達する。

 帝国データバンクの調査では観光事業者の倒産は八月末時点で千三百十五件と昨年、一昨年を上回るペースで増え続けている。

 観光産業は宿泊のほか小売りや交通機関など裾野が広い。雇用対策としても効果が見込めるため予算投入はやむを得ないとしても、支援の恩恵を受けるのは観光産業だけでなく比較的生活に余裕があり、旅行ができる層である点も考慮すべきだ。

 十月一日から食料品などを中心に生活必需品の値上げが相次ぐ。暮らしが追い詰められる中、旅行どころではないという世帯は多い。観光地ではない商店街にも人は戻っておらず「街の灯」は消えかかっている。税を活用した支援策である以上、不公平は許されない。旅行支援の期間終了後、国は旅行需要の動向や効果を見極めた上で観光産業への支援継続が妥当か検証すべきだ。

 コロナ感染者の減少が下げ止まったり増えたりしている地域もある。海外観光客の上限も撤廃となり人の流れは増えるはずだ。感染が再爆発した場合、躊躇(ちゅうちょ)なく支援を停止するのは当然である。 

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