中国政府は今月、2兆5000億元(約47兆円)規模の減税を発表した。5年連続でのこうした減税は総額9兆7000億元余りで、現在の為替レートで換算すれば、米国のトランプ前政権が2017年に実施した1兆5000億ドル(約180兆円)減税を超える。
中国で最も有名なサプライサイド経済学の支持者と知られる李克強首相は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)閉幕後に開いた11日の記者会見で、減税を成長押し上げの最善策だとし、経済の「根に直接与える肥料」と呼んだ。徴収する税金が減ることは一見マイナスでも実際にはプラスだとの認識を示し、「きょう与え明日より多くの見返りを得る」と述べた。
ただトランプ政権の減税同様、中国の大型減税もその効果を巡り議論を呼んでいる。企業への利益配分を増やすことで、投資・生産の拡大が可能になり、労働者と消費者には雇用増加と価格下落という形で恩恵が行き渡るとサプライサイド経済学の支持者がみているのに対し、減税は持続不可能な債務を助長し、しばしば無駄な投資につながるとみるエコノミストも多い。財政支援は企業よりも家計を対象とする方が有効との指摘もある。
中国は以前から、マイクロプロセッサーや再生可能エネルギー、電気自動車(EV)といった優先分野への投資や研究開発支出の増加など、長期的な戦略目標を達成するために選択的な法人減税を活用。ここ数年は米中貿易戦争に苦しむ中小企業を対象とした減税など、より戦術的な手法で減税を実施してきた。21年の中国税収は国内総生産(GDP)の21%相当で、経済協力開発機構(OECD)加盟国 平均の34%を下回っている。
北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は、企業が手元資金の不足と高コストによって制約を受ける状況で、サプライサイドの施策は経済成長を高める効果的な方法であるとした上で、 「私の意見では問題は中国の民間事業が直面している制約は主に需要サイドであることだ」とリポートで論じ、「賃上げや社会的移転の拡大などを通じ直接的もしくは間接的に需要を押し上げるやり方に焦点を絞る」政策を提唱した。
李首相は来年の 退任を明言しており、中国政府が積極的な減税を継続するかどうか疑問も浮上。中国の財政赤字拡大は追加減税の余地がなくなりつつあることを意味しているとみるエコノミストもいる。ゴールドマン・サックス・グループによると、広義の財政赤字は対GDP比率が今年13.1%と、18年の10%から上昇する見込みだ。
中国財政科学研究院の趙福昌研究員は「大規模な減税と料金引き下げは持続不可能だ」との見解を示す。ただ、米国と同様に、中国では誰もが財政赤字がリスクだと考えているわけではない。米ウィラメット大学のヤン・リアン教授(経済学)は公共部門の債務はおおむね中国政府が発行する通貨に等しく、インフレ率が低いため、「中央政府レベルでは財政的制約はない」としている。
原題: China Bets on $1.5 Trillion of Tax Cuts in Quest for Growth (抜粋)
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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