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Wednesday, February 9, 2022

小型衛星群による“光害”から夜空を救え:天文学者たちが新たな機関を立ち上げた切実な理由 - WIRED.jp

もうひとつのハブは、産業界の専門家たちとコミュニケーションをとりながら、企業が新たな人工衛星を建造する際に光の反射を抑えた設計にしてもらう。さらに、電波望遠鏡などに使う無線周波数を避けてもらうよう働きかける。

3つ目のハブは、国の政策や国際的な政策への提言を中心に活動する。最後のハブは、先住民コミュニティや環境保護活動家、アストロツーリズム団体、プラネタリウムのコミュニティなど、光害を抑制して暗く静かな空を守ることに関心をもつ人々と協力し、コミュニティへの関与をとりまとめる。

コミュニティのエンゲージメントを担当するハブの責任者で、オーストラリアのサザンクイーンズランド大学の文化天文学の専門家であるジェシカ・ハイムは、以前参加していたSATCONワーキンググループの先住民のメンバーのなかには衛星コンステレーションの増殖を新しいかたちの“植民地化”と考えている者もいると指摘する。

「人工衛星は、わたしたちと星との関係性や儀式を通じて星とつながるための道を、文字通り遮る存在です。もし光害が先住民の伝承をかき消しているとすれば、これらの人工衛星は先住民たちの伝承を上書きするものといえます」と、ハイムは先住民の語り手の言葉を引用して会見で語っている。多くの先住民の人々にとって、そして先住民以外の人々にとっても、夜空には文化的な重要性があり、環境の一部と考えるべきであるともハイムは言う。

人工衛星の航跡が写り込む

新たなセンターは、天文学コミュニティ全体から十分な支持を得ている。「現在もインフラの量は増え続けています。今後は光の軽減を衛星の設計に組み込むことで、確実に天文学を研究できるようにすると共に、未来の世代のために夜空を守ることが非常に重要になります」と、ブリティッシュコロンビア大学の惑星科学者のアーロン・ボーリーは語る。

ポーリーは、このセンターとは関連がない機関「The Outer Space Institute」の共同創設者でもある。最近公表した研究報告書でポーリーらは、数年後に軌道上の人工衛星の数が約65,000機に達すれば、望遠鏡や肉眼で見える夜空の光の10分の1ほどを人工衛星が占めることになると推定している。

すでに一部の天文学者は、衛星群の影響を観測している。ある天文学者たちのチームが1月、サンディエゴの近くにあるパロマー天文台の観測装置「ツヴィッキー・トランジェント・ファシリティ(ZTF)」による観測結果を公表した。この観測からは、21年の夕暮れどきに撮影された写真の18%に、人工衛星の航跡が写り込んでいることが明らかになっている。これに対して2年前は0.5%未満だったというが、影響を受けたのはごく一部の画素だけだった(人工衛星は通常、夕暮れどきの空に最もよく見える)。

「夕暮れどきの薄明かりで可能な限り太陽の近くを向き、最大級の視野をもつ装置でかなりの時間かけて観察したことを考えれば、多くのZTFの画像に人工衛星の航跡が写っていたとしても驚くことではありません」と、この研究報告書の主執筆者でワルシャワ大学の天文学者のプシェメク・ムロツは指摘する。ムロツの予想によると、この2020年代の終わりまでには、夕暮れどきに撮影された望遠鏡画像のほぼすべてに人工衛星が通過している航跡の線が写り込むようになるという。

また、米国立科学財団の資金提供によりチリ北部に建設されたヴェラ・ルービン天文台の高感度撮像装置が、人工衛星の光の影響を受けるだろうともムロツは予想する。この望遠鏡は数十年にわたって進められているプロジェクトであり、来年の観測開始が予定されている。

地球に迫る天体の発見も困難に?

天文学者たちは、こうした光によって特定の種類の天体を見つけることが難しくなることも懸念している。これには映画『ドント・ルック・アップ』に登場する衝突で惑星を滅ぼすような地球近傍小惑星や、彗星なども含まれてくる。

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