今回の総裁選を総括する。安倍のひとり勝ち、以上。 総裁選は面白かったと認めざるをえない。コロナ禍の中でもあり、国の行く末がかかっているのに何をバカなことをと眉をひそめる人もいるだろう。確かにその通りで、本来なら茶番劇だったはずが、それを払拭するほどのエンタメになってしまった。今回の総裁選を蔑む政治記者や政治ジャーナリストがいるなら、看板を下ろした方がいい。 【写真】嫌われ河野太郎はどこへ行く…
映画のダイジェスト的に振り返ってみると、禅譲詐欺の憂き目にあってきた岸田文雄の捨て身の出馬宣言に始まり、主演に見えていた菅のまさかの不出馬表明。ここから畳み掛けるように話が展開する。当初は泡沫・当て馬と評されていたタカ派の高市早苗が存在感を増す一方、有力だった石破は舞台を去り、代わりに異端児・河野太郎が出現。そこに滑り込んだのがハト派の野田。自民党結党以来初めてとなる女性の複数候補とそれぞれ対照的な政策は、時代を反映した流れとなった。そして、派閥分裂かと見せかける騒動、党員党友はもちろん一般国民にも人気とされた小石河連合の誕生と崩壊も見逃せない山場だった。クライマックスでは、岸田と河野が1票差で決選投票へ……。終わってみれば、「永田町一つまらない男」と評される岸田が勝者となり、自民党劇場続編の主演を勝ち取った。 だが、我々はこの一連のストーリーの本当の主役を見誤ってはならない。 それは、安倍晋三前総理だ。
高笑いの安部前総理
安倍は、20人の推薦人集めもままならない高市の応援を買って出た。基本戦略は、高市を強くして河野の一回目過半数獲得を阻み、決選投票では高市票を岸田に上乗せして勝利するという、当初から多くの人が予想したものだった。 ところが高市支持者は日に日に増え、総裁選まで10日ほど残して高市が岸田を抜いて2位につけるという世論調査結果まで出てきた。そこで安倍は手を緩めると思われたのだが、大方の予想に反して安倍は電話をかけ続けた。 その結果、高市は議員票が114票で、70~80票と見積もられていた数字を5割も積み増した。さらに重要なのは党員党友票で、3位ではあったが得票率は20%にものぼったことだ。 安倍はその一方で、岸田周辺には自身の最側近で政務秘書官を最後まで務めた今井尚哉や、お抱え記者とも言われるNHKの岩田明子を送り込んでいる。何より、岸田の選挙対策本部顧問は甘利明。スキャンダルで一度は失脚したものの、第二次安倍政権の前半を中心的に支えた安倍の盟友の一人だ。その甘利が新幹事長で高市が政調会長なのだから、安倍としては思い通りの高笑いだろう。岸田を勝たせた最大の功労者が安倍なのだから、人事の論功行賞は当然と言える。岸田はなぜここまで安倍に気を遣うのか。 一連の動きを安倍の暗躍ととらえるのは誤りだ。彼は裏でコソコソ糸を引いていたわけではない。高市支持を明確にした上で、正々堂々と彼女の支持層を増やそうとする、まさに選挙の王道を実践した。
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確かに
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