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Sunday, April 4, 2021

「本作は確かにLGBTQ映画ですが…」同性愛者の役を“当事者”ではないヘテロセクシュアルの俳優が演じるということ - 文春オンライン

 9歳で子役デビュー以来26歳の今日まで4度のアカデミー賞ノミネートを誇る若き演技派シアーシャ・ローナン。実在の古生物学者メアリー・アニングと裕福な化石収集家の妻シャーロットの関係にスポットライトを当てた『アンモナイトの目覚め』(4月9日公開)では、主人公メアリーと恋に堕ちるシャーロットを演じ、その豊かな表現力と繊細な演技で注目を浴びている。

シアーシャ・ローナン

「『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のジョー役のように、私はこれまで自由な女性の役ばかり演じてきましたが、シャーロットは真逆。そこが興味深かったんです。役作りのために刺繍を習ったりしたけれど、つまらなくて……(笑)。そのつまらないと感じたことも重要でした。シャーロットは、時代の犠牲者であり、彼女の生活は退屈だったと思うから」

 19世紀の英国の海辺の町。老いた母親と暮らすメアリーは、流産で心身ともに傷ついたシャーロットを預かる。住む世界がまったく違うふたりだが、あるきっかけで親密になる――。女性が仕事も恋愛も自由にできない保守的な時代に、お互いを認め合い、繋がることによって自らを解放していく女たちの物語である。

「この映画に関わるまで、私はメアリー・アニングについて知りませんでした。今ではそのことに罪悪感すら感じます。化石発掘のパイオニアで、偉大な功績を残したにも関わらず、彼女が発掘した化石は当時男性の名前で発表されており、彼女の名前はほとんど記録に残っていないんです。メアリーは男性にも時代にも虐げられました。踏みにじられながらも、愛する仕事をずっと続けた彼女の生き方にとても感銘を受けました」

 メアリーを演じたのは、英国の名優ケイト・ウィンスレット。2人の間に流れる感情の起伏を大切にすべく、撮影は時系列通りに進められ、セックスシーンもふたりの俳優に委ねられていた。

「これほど自由にセックスシーンを演じられたことはありませんでした。私とケイトは誰かの指示でなく、自分たちで考え、決めて演じたので自信が持てたんです。メアリーとシャーロットとの関係は非常にデリケートで、優しさをもってお互いを癒しあう姿はとても美しいと思います」

 時代劇ではあるが、ジェンダー格差やシスターフッド、LGBTQなどのテーマが洞察に富んだ視点で重層的に描かれている点も、本作が高く評価されている理由だ。だが一方で最近では同性愛者の役を“当事者”ではないヘテロセクシュアルの俳優が演じることについて異議を唱える声もある。

「映画におけるキャラクターをきっちり描いているのであれば、私は演じる俳優個人のセクシュアリティは関係ないと思います。本作は確かにLGBTQ映画ですが、ジェンダーを超えて人間そのものを描いた作品。私とケイト、フランシス・リー監督が作り上げたものを、LGBTQのコミュニティの人たちがワクワクして観てくれたら光栄ですね」

Saoirse Ronan/1994年ニューヨーク生まれ。子役を経て、13歳の時『つぐない』(’07)でアカデミー賞に初ノミネート。代表作にグレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』(’17)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(’19)他。

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