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Sunday, April 18, 2021

有名なダニング・クルーガー効果は「無能な人ほど自分を有能だと考える」という法則ではない - GIGAZINE

メモ


認知科学や心理学に関したニュースやブログをよくチェックする人の中には、「ダニング=クルーガー効果」という言葉が取り上げられているのを目にしたことがあるという人も多いはず。近年、よく取り沙汰されるようになったこの現象の正体について、心理学の専門家が解説しています。

what the Dunning-Kruger effect is and isn’t – [citation needed]
http://www.talyarkoni.org/blog/2010/07/07/What-the-Dunning-Kruger-effect-Is-and-Isnt/

テキサス大学オースティン校心理学部の特任准教授であるTal Yarkoni氏によると、ダニング=クルーガー効果とは「成績の悪い人が、自分の能力を他の人に比べて過大評価する傾向」と、逆に「成績のいい人が、自分の能力を他の人より過小評価する傾向」を指しているとのこと。しかし、ダニング=クルーガー効果に言及する記事や言説の中には、誤って「ある仕事が苦手な人ほどその仕事を天職だと考える」や、「能力が低い人ほど自分の能力が高いと考える」と主張しているものがあるそうです。

ダニング=クルーガー効果に関する「よくある勘違い」と実際のダニング=クルーガー効果については、以下の記事に端的にまとめられています。

「無能な人だけが自分を過大評価する」は間違い、本当は平均的な人でも自分を過大評価する - GIGAZINE


Yarkoni氏は、「こうした誤った説明に説得力があるのは、暗黙のうちに公正世界仮説に訴えかけてくるからではないでしょうか。誰しも、『優秀だと嫌みったらしく自慢する人は実は大したことない』と思いたがるものであり、そういう人が実際に自分より優れている可能性に向き合うのは、ひどく不愉快なものです」と指摘しました。

その上でYarkoni氏は、ダニング=クルーガー効果をより深く理解する上での手がかりとなるポイントを、次の3点紹介しました。

◆1:平均への回帰
平均への回帰とは、「ある試行で偏った結果が出た場合、次の試行では平均に近い結果が出やすくなる」という現象のことです。Yarkoni氏によると、ダニング=クルーガー効果に対する批判の中で最も一般的なのは「ダニング=クルーガー効果は単に平均への回帰を反映しているに過ぎない」というものだとのこと。

成績に対する自己評価は、成績そのものだけでなくその人の性格や測定の誤差、自己の認知能力に関する認知能力、つまりメタ認知の能力などさまざまな要因に影響されるため、成績が極端に高い人や低い人の自己評価も基本的には常識的な範囲に収まります。これが、ダニング=クルーガー効果に見られる過大評価や過小評価の正体ではないかと、Yarkoni氏は述べています。


◆2:自己評価バイアス
ダニング=クルーガー効果を提唱したデイビッド・ダニング氏らの研究では、「無能な人の自己評価と実際の成績の差が、有能な人における差よりも大きい」という現象が確認されており、これは平均への回帰では説明できません。この不足を補うのが、「自己評価バイアス」です。自己評価バイアスとは、「人は自分を過度に肯定的に捉えてしまう」という傾向のことで、有能な人はダニング=クルーガー効果によって自分の成績を過小評価しますが、これは自己評価バイアスによってある程度相殺されるため、過小評価の度合は小さくなります。これが、前述の有能な人と無能な人の自己評価の違いにつながるというわけです。

◆3:課題の難易度による誤差
ダニング氏らの研究を検証するため、心理学者らは多くの追試を行ってきました。ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのキャサリン・バーソン氏らが実施した、シカゴ大学の学生らに簡単な課題と難しい課題を行わせて、その成績と自己評価の関係を調べる(PDFファイル)実験もその1つです。

バーソン氏らの研究の結果を示すグラフが以下。縦軸と横軸がそれぞれ自己評価と成績を表しています。ひし形で示された簡単な課題の時は「成績が良かった人」の方が正確に自己評価している一方で、四角で表された難しい課題では「成績が悪かった人」の方が正確に自己評価しています。


Yarkoni氏はこの研究とダニング=クルーガー効果の関係について、「課題が難しいと、人は往々にして『自分は他の人に比べてうまくやれなかったに違いない』と考えてしまいます。逆に、課題が簡単だと『自分は他の人より上出来だった』と考えるでしょう。その結果、有能な人は課題が簡単な時に正確に自己診断し、逆に無能な人は課題が難しい時に正確に自己診断できるということになります。そして、ダニング氏らの研究で被験者が行った課題は、比較的簡単なものでした」と述べました。

その上で、Yarkoni氏は「ダニング=クルーガー効果を身近な人に当てはめる時に忘れてはならないのは、自分の信念を支持する情報ばかりを集めてしまうという確証バイアスの存在です。『無能な人は、自分が無能だと気付けるだけの能力を持っていないのだ』と信じ切っている場合、その証拠を見つけるのは簡単でしょう。いずれにせよ、今度また嫌みったらしい同僚の自慢話をダニング=クルーガー効果のせいにしたくなったら、その同僚が単に嫌な奴なだけであって、自分のことを理解していないとまで決めつける必要はないということを思い出してみてください」とまとめました。

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