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Tuesday, April 27, 2021

陶器と磁器の違いとは - 見分け方や各種陶磁器の歴史を紹介 - マイナビニュース

「陶磁器」と一括りにされることもありますが、陶器と磁器は似ているようで大きな違いがあります。陶器と磁器の見分け方や歴史を知れば、生活の中での「焼き物」選びの参考にもなります。

この記事では、陶器と磁器の特徴や代表的な陶器と磁器の種類をはじめ、英語表現などについても解説します。陶器と磁器の違いについて正しく理解して生活に活かしていきましょう。

身近な陶磁器の代表例

一般的に「焼き物」と言われているものは、陶磁器とも呼ばれています。陶磁器は陶器と磁器の両方を指す総称で、原料の土や石を成型して焼いた物のことです。身近な例として、陶器は日本茶を飲むときの湯呑みを、磁器はコーヒーカップを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

陶器と磁器の違い

陶器と磁器では、原材料や製造方法などにさまざまな違いがあるため、見分け方は比較的簡単です。ここでは、陶器と磁器の違いを具体的に見ていきます。

原材料

陶器と磁器は原材料の配合が異なります。主な材料は以下の通りです。

粘土……この比率が高いとよく粘りやわらかい土になり、低いと硬めでコシの強い土になります。

長石……粘土素地の隙間をつなぎ、高温で熔けてガラス質になります。

珪石……ガラス質になる主成分で、比率が高いと硬度が得られます。

【陶器】

自然原料の粘土を多く使っています。この粘土は陶土と呼ばれて、陶器のことを「土もの」と言います。陶土は乾燥しても縮みにくい特徴があります。一般的に粘土が5割程度、長石が2割程度、珪石が3割程度です。

【磁器】

磁器は長石と珪石を多く使っているため、「石もの」と呼ばれています。一般的に粘土が3割程度、長石が3割程度、珪石が4割程度です。

焼成温度

磁器にガラス質になる成分が多いことから、焼成温度は磁器のほうが高くなっています。

【陶器】

陶器の一般的な焼成温度は1,100~1,200℃です。

【磁器】

磁器の一般的な焼成温度は1,300℃前後となっています。

硬度

【陶器】

陶器は低めの温度で焼くため軟らかいのが特徴です。そして磁器に比べて割れやすくなっています。

【磁器】

磁器は高めの温度で焼くため陶器よりは硬くなっています。ただし、部分的な衝撃にはもろく、ヒビが入りやすいので注意が必要です。

吸水性

【陶器】

陶器は素地が荒いため吸水性がありますが、釉薬(うわぐすり)がかけてあれば、表面がガラス質の膜で覆われるので、吸水性はなくなります。

【磁器】

磁器は素地が緻密なので、吸水性はほとんどありません。

透光性

【陶器】

透光性とは、光を通す性質のことをいいます。陶器には透光性はありません。

【磁器】

磁器は素地が緻密で白いため、光を透します。磁器を光にかざすと、うっすらと光を透しているのがわかります。磁器が光を透すので、窓際に磁器を飾る方もいます。

【陶器】

陶器は有色です。陶器の原料となる陶土は、有色のものがほとんどです。赤・黒・緑・黄・青・白など、およそ80色以上の色合いが存在します。陶土には、鉄分をはじめさまざまな有機物を含んでいます。それが色の要因になっているのです。

【磁器】

磁器の原料の土は、磁器土とか磁土と呼ばれています。この土は、有機物をほとんど含んでいない白色です。

叩いたときの音

【陶器】

陶器をスプーンで叩くと「ゴンゴン」という低くて鈍い音がします。陶器は粘土でできているので、音は広がりません。

【磁器】

磁器を叩くと「キーン」という金属的で澄んだ高い音がします。磁器はガラス質を含んでいるので、音が美しく響くのです。

代表的な陶器と磁器の種類

陶器と磁器の違いがわかると、有名な焼き物がどちらなのか判断できるようになります。

陶器は主に和食器に用いられます。元々、茶器などに用いられていたためです。一方、磁器は洋食器に多く用いられています。陶器に比べて硬度が高いので、ナイフやフォークが当たる洋食器に適しています。

陶器の種類

日本では、昔から各地で伝統的な陶器が作られてきました。日本の陶器で有名なものに、美濃焼・備前焼・益子焼・信楽焼などがあります。

これらの産地や特徴を知っていれば、これからの食器選びが楽しくなるはず。ここでは、有名な陶器を見ていきます。

美濃焼

美濃焼は、岐阜県東濃地方を中心に作られている陶磁器の総称です。「特徴がないのが特徴」と言われ、多様な形や色が存在します。そのため現代の食卓にフィットしやすく、食器類の生産量は全国シェアの約60%を占めています。

現在では、多治見市・土岐市・瑞浪市が生産拠点になっています。特に多治見市のさかづきや、土岐市のどんぶりは有名です。

備前焼

備前焼は、岡山県備前市の伊部地区が代表的な産地となっています。古墳時代の須恵器をルーツとする陶器で、釉薬を使用せず、絵付けもしないシンプルさが特徴です。

高温で焼き、焼くときの条件の違いで、ひとつとして同じ色・模様にならない手作りのような味わいが人気だと言われています。硬くて割れにくいので茶器として愛され、のちに庶民の日用品として広まりました。

益子焼

益子焼は、栃木県益子町の焼き物です。江戸時代末期に誕生して、主に鉢や土瓶といった台所用品が作られてきました。

装飾も刷毛目や櫛目といった、シンプルかつ実用的なものが基本となっています。ぽってりとした肉厚感のあるフォルムが特徴で、食器として広く使われています。

信楽焼

信楽焼は、滋賀県の信楽町を中心に作られている陶器です。一説では奈良時代に誕生したとされ、日本六古窯のひとつとしても知られています。

素地が粗めで赤褐色がかっており、素朴な風合いを醸しています。代表的なものはやはり狸の置物でしょう。ほかには火鉢や植木鉢など、比較的大きなものが生産されています。

磁器の種類

磁器は薄く白いため、絵柄をつけやすいという特徴があります。日本で有名な磁器というと、有田焼(伊万里焼)・九谷焼・砥部焼などでしょう。

世界に目を向ければ、ドイツのマイセンやフランスのリモージュなどが有名です。陶器と同様に、産地が違えばその特徴も異なります。産地ごとに見ていきましょう。

有田焼(伊万里焼)

有田焼は、佐賀県の有田地方を中心に作られている磁器のことです。日本では17世紀ごろに誕生したとされ、伊万里港から出荷されていたこともあって伊万里焼とも呼ばれます。

透き通るような白さと呉須(藍色の顔料)での染付、ガラス質の絵具(赤・緑・黄・紫・青)で描いた華やかな赤絵が特徴です。食器としてはもちろんのこと、美術工芸品としても高く評価されています。

九谷焼

九谷焼は、石川県の加賀地方で作られています。色鮮やかな色彩と繊細な絵付けが特徴です。絵付けは窯元ごとに独自の画風が確立され、例えば5色を使いのびやかで自由な線で描く古九谷風、赤以外の4色を使う吉田屋風などがあります。

なかでも、背景を赤で塗り埋めたところへ金彩で絵付けする金襴手という技法は、明治以降にさらに発展し、「ジャパンクタニ」と呼ばれて世界で大いに人気を博しました。現代でも美術工芸品として愛されています。

砥部焼

砥部焼は、愛媛県の砥部町を中心に作られています。青い文様の食器や、青磁の花器などが有名です。江戸時代に生産に誕生し、今では伝統的工芸品としても知られています。

代表的な絵柄に唐草紋や太陽紋などがあり、大胆な線で描かれたデザインが人気です。割れにくく熱に強いことも特徴で、比較的お手頃感があるため日常使いに適しています。

陶器と磁器の英語表現

多種多様な日本の陶磁器は、海外でも人気があります。陶磁器目当ての旅行客や、各地で開催される陶芸教室にも外国人が多く参加しています。外国人も関心を寄せる日本の陶磁器、この機会に英語表現も覚えておきましょう。

陶器の英語表現

陶器の一般的な英語表現は「pottery」や「edrthenware」「crockery」があります。粘土で作られたことを強調する場合には「clay」という場合もあります。

「pottery」は陶器類全般を指し、陶器用の粘土や陶芸などの意味もあります。「edrthenware」は素焼きや土器を指します。「unglazed earthenware」は直訳すると「釉薬の掛かっていない陶器」という意味ですが、一般的には「素焼き土器」と訳されます。「crockery」も陶磁器全般を指す単語です。なお「crockery」の原形は「crock(厚手の粘土製の壷、瓶、大鉢)」で、その語尾にery(集合体や総称を表す接尾語)をつけたものです。

磁器の英語表現

ここからは磁器の一般的な英語表現について説明します。主に「china」と「porcelain」の2つが挙げられます。

それぞれの単語について見ていきましょう。

china

「china」は磁器を意味します。17世紀から18世紀にかけてヨーロッパ大陸では中国趣味、シノワスリ(Chinoiserie)が流行し、中国製(清朝、なかでも康熙帝、雍正帝、乾隆帝の時代)の磁器が大人気でした。その流れから磁器を「china」と呼ぶようになったのです。

<使用例>

  • In Europe, china ware was imported from Japan. (ヨーロッパの磁器は日本から輸入されています)

porcelain

英単語の「porcelain」は、磁器を意味します。また、透明性のある焼き物のことを指しています。

<使用例>

  • I selected a porcelain doll for her present.(彼女へのプレセントに、陶器製の人形を選んだ)

英語圏では陶磁器と表す

日本では、陶器と磁器を総称して、陶磁器と呼びます。同じように、英語圏では陶磁器のことを「ceramics」と称します。陶器と磁器の区別がわからない方も多いので、ceramicsが一般的な表現だと言われています。

ceramics

「ceramics」という表現には、ガラスやほうろう(金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けた素材)なども含まれます。

<使用例>

  • Arita is a famous town for ceramics. (有田は陶磁器で有名な街です)
  • This store sells ceramics. (この店は陶磁器を売っています)

陶器と磁器の違いを知ろう

陶器と磁器では、原料や焼成方法から違うことを理解していただけましたか。一般的に陶器は素朴で温かみがあり、一方の磁器は繊細で洗練された傾向にあります。こうした風合いや質感を、自分の好みに照らし合わせて選ぶと楽しさが増しますね。

用途も陶器と磁器では異なりますので、生活のさまざまなシーンに合わせて取り入れてみてください。

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