AWS流のハイブリッド戦略がますます拡大
2020年12月11日 09時00分更新
AWS re:Inventのアンディ・ジャシーCEOの基調講演、最後のテーマは「ハイブリッド」。オンプレミスか、パブリッククラウドかの二者択一ではなく、同じAWS体験をどこでも実現するというハイブリッド戦略に向け、AWS Outpostのラックマウント版やAWS Local Zoneの拡張などさまざまなサービスや取り組みが披露された。
改めて問い直す「ハイブリッド」の意義
アンディ・ジャシーCEOの基調講演のラスト20分は、ハイブリッドクラウドがテーマだ。長らくAWSはハイブリッドクラウドという表現には否定的で、パブリッククラウド前提でサービスを展開してきた。「多くの人はハイブリッドという用語やソリューションを、オンプレミスとパブリッククラウドの掛け合わせと考えている。この言葉の定義は、オンプレミスのプレイヤーがクラウドの波に乗るために作り出したものだからだ」とジャシー氏は指摘する。
その戦略は今も変わっていない。クラウドとデータセンターをまたにかけるハイブリッドクラウドのソリューションは、成功しているとは言いがたいし、インフラの二重投資になったり、管理が煩雑になったり、個人的にもあまりメリットはあるとは思えない。「われわれは多くの企業とのやりとりにおいて、自前のデータセンターを持たないでやっていこう、持つとしてもフットプリントのモノにしようと考えてきた。機が熟せば、いずれすべてはクラウドになると考えている」とジャシー氏は語る。
その一方で、ジャシー氏はこの「ハイブリッド」というソリューションや技術にも再発明が必要だと説く。AWSにおいて「本当のハイブリッドはなんなのか?」「オンプレミスの定義は?」といった原則を問い直し、「ハイブリッドで使いたい」というユーザーの声を考えたという。
AWSは既存のオンプレミスと同じ環境をクラウドでも利用したいという声に応え、ヴイエムウェアとの提携による「VMware Cloud on AWS」を提供してきた。VMwareの環境をAWS上に構築するサービスだが、ジャシー氏は「これはある意味、不思議なコラボレーションだ。他のメーカーとはこうした連携をしていない」と語る。確かに従来からのAWSの戦略から考えれば、今も本流とは言いがたいサービスだが、多くの企業や政府が利用しているとのことで、確実にニーズはあったのだろう。
API、コントロールプレーン、ツール どこでも同じAWS環境を実現する
そして、AWSと同じAPI、コントロールプレーン、ツールをオンプレミスでも使えるようしたのが、2年前に発表された「AWS Outposts」になる。AWS Outpostsでは、AWSと同じハードウェア上に、AWSと同じコンピュート、ストレージ、データベース、アナリスティックが動作する。「多くの人たちが望んでいることは、AWSをディストリビュートしてほしいということだ。お客さまの手元にAWSを持っていくことなんだと。ここで生まれたのがOutpostsだ」とジャシー氏は語る。すでに1000社近くが導入を進めており、シスコやロッキード、トヨタ自動車などもユーザーだという。
とはいえ、ラック単位で提供されるAWS Outpostsはどんなユーザーでも導入できるというものでもない。こうした声に応えたのがラックマウント型のAWS Outpostsになる。1Uモデルは64vCPU、128GiBメモリ、4TBのNVMeメモリ、2Uモデルは128vCPU、512GiB、8TBのNVMeメモリを搭載。2UモデルはAWS InferentiaまたはGPUをアクセラレーターとして搭載できる。ネットワークに接続すると、あとはAWSが自動的にリモート管理するという点は既存のAWS Outpostsと同じだ。
また、遅延に敏感なアプリケーションのためにAWSリージョンをより大都市の近くにまで延伸するサービスが「AWS Local Region」だ。映画製作やグラフィックレンダリング、ゲーム会社を対象に2019年、ロサンゼルスからスタートしたAWS Local Regionだが、今回ボストン、ヒューストン、マイアミが新たに追加。そして、2021年中にアトランタ、シカゴ、ダラス、デンバー、カンサスシティ、ラスベガス、ミネアポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、フェニックス、ポートランド、シアトルの12都市も開設される予定だ。
また、農場や油田などネットワーク環境が使えない場所ではSnowballファミリーが利用できる。また、5GのエッジにAWSを延伸するAWS Wavelengthのプロジェクトも国内外で進んでおり、あらゆる場所でAWSを利用できるようになっている。常時接続でクラウドを利用できるだけでなく、低遅延で使いたい、ネットワークがなくても使いたいという要望にも答える。まさにAWS Everywhereだ。「単なるクラウドとオンプレのデータセンターだけではない。いろいろなエッジノードに対応できる。最終的にはクラウドに収斂していくが、そこで動かすことに意味のあるワークロードもある」とジャシー氏は語る。
基調講演の最後、ジャシー氏は将来への不安を吐露した「I wish I could Google my ending. Someone give me reassurance,answers,anything will do.」という歌詞を引き合いに、「同じメッセージが企業にも言えるのではないでしょうか? みなさん、これからなにが起こるのか不安だと思う」と訴える。
その上で、ジャシー氏は、「すべての変化をみなさんがコントロールすることはできないが、みなさんがどれだけのキャパシティを持ち、どれだけ変化を起こせるのかはコントロールできる。意図を持ってフォーカスを絞れば、再発明は起こせる。そのステップのすべてをわれわれは支援する」と語り、講演を終えた。
アスキーではAWS re:Invent 2020を引き続きレポートする。
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確かに
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