国際金融センターを目指すどころか、東京市場の一層の地盤沈下が懸念される。
東京証券取引所でシステム障害が発生し、株式全銘柄の売買が終日ストップした。過去に例のない失態だ。
企業が資金調達したり、個人が資産運用したりする取引所は、資本市場の土台となるインフラだ。翌日再開されたが、再発防止策は示されておらず、市場関係者の間に不安が募っている。
発端は基本的な取引情報などを記録するメモリーの故障だった。別のメモリーに切り替えるバックアップ機能が作動せず、システム全体にトラブルが波及し、全面停止に追い込まれた。
海外の取引所でも障害は起きている。ただ、その日のうちに復旧して取引を再開するのが一般的だ。投資家に売買機会を提供する重い責任を負っているからだ。
東証の場合もシステムを再起動すれば、その日のうちに取引を再開できたという。だが「事前に受け付けた注文がリセットされるなど混乱が大きいと判断し、見送った」と説明した。復旧時に支障が出るなら、システムの設計自体の適切性が疑問視される。
情報開示もお粗末だった。早朝にウェブサイト上で売買停止を発表したが、夕方の記者会見まで詳しい説明をしなかった。小出しの情報が投資家を困惑させた。迅速な経営情報の開示を求められてきた企業からは「自分には甘いのか」と批判の声が出ている。
システム障害は初めてではない。2005年にはプログラムミスで全銘柄の売買を停止した。みずほ証券の誤発注問題や、旧ライブドア株の売買急増を巡る混乱もシステムの不備が原因だ。18年には証券会社による大量のデータ誤送信で取引が一時停止している。
上場株式の時価総額で世界3位とはいえ、取引システムが脆弱(ぜいじゃく)では発展は望めない。
政府は国際金融センター構想を掲げるが、このままでは海外との競争に生き残れないだろう。
まずはシステムを手掛ける富士通とともに原因究明を急ぐべきだ。その上でバックアップ機能強化などの再発防止策を講じる必要がある。それなくして、投資家の不信は払拭(ふっしょく)できない。
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