今週、一部で「MNPの手数料無料化」「携帯電話『頭金』名称変更へ」という報道があった。数週間前の有識者会議で議題に上がっていたこともあり、総務省としては具体的にこれからメスを入れていくということだろう。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年7月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
確かにキャリアショップでの「頭金」は、世間でいうところの「頭金」とは異なり、価格の一部を最初に負担するものではない。顧客が支払う価格とは別に上乗せされた「手数料」というべきものである。キャリアショップでは何故か頭金が存在するにも関わらず、オンラインショップには頭金は求められない。
キャリアショップを運営する販売代理店に対する「手数料」的な位置付けとなっており、これが総務省の刺されてしまった。ただ、確かに顧客に対して、誤認させている感は否めず、名称変更を求められるのは当然と言える。今後、頭金という言葉が使えなくなる中、キャリアショップがどのようにユーザーから「販売手数料」を徴収するのかが注目といえる。これで一気にユーザーがキャリアショップ離れを起こし、オンラインショップに駆け込むのか、それとも黙って販売手数料を払い続けるのか。
販売手数料を取ることができず、撤退を余儀なくされる販売代理店が出てきてしまうのか。いずれにしても、キャリアショップを運営する販売代理店にとってみると、受難な時代を迎えていると言わざるを得ない。
一方、MNPの手数料無料化は筋が悪い。
総務省としては、利用件数が落ち込むMNPを盛り上げたいのだろうが、そもそも、ユーザーに今の時代、MNPしてまで他キャリアに移行するメリットがまるでない。MNPを盛り上げたいのであれば、端末の割引規制を撤廃する方が早い。
手数料を無料化する根拠として、有識者からは「手数料の根拠が不透明」という意見が上がっているという。そんなことを言い始めたら、世の中に設定されている料金や価格が全て「根拠が不透明」という難癖をつけることができてしまう。
しかも、MNPをする人の手数料を無料化するということは、その手続きに関するコストをキャリアを使い続けるユーザーが負担することになる。これこそ「不公平感」に繋がるのではないか。
これまで有識者会議では、端末を頻繁に買い換える人は、端末割引で得をしている。一方、同じ機種を使い続けている人は端末割引の恩恵を受けられずに「不公平ではないか」というロジックで、端末販売と通信料金の分離を推し進めてきた。
まさに同じ不公平感が起きようとしているのに、なぜ、MNPの手数料撤廃だけが許されるのか。
これまで総務省が手がけてきた競争政策が全く機能していない焦りがあるのかもしれないが、もう少し一貫性のある政策を期待したい。
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