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Saturday, June 6, 2020

濃い味付けに食事が進むジョージア料理と旅人を惹きつけるメスティアの塔 | Cyclist - Cyclist(サイクリスト)

 トルコの次はトルコから東北部に位置するジョージア(旧グルジア)に入国する予定だったが、サイクリストから聞くジョージアの前評判はまちまちだった。天気が悪く、路肩が狭い。そして交通マナーが悪くて苦労したという人が居て入国するのは少し気が重かったし、なにより走りやすくて慣れ親しんだトルコを離れがたかった。ところが入国してみるとそれがすぐに杞憂だと分かった。確かに路肩は狭いのでトルコのように悠々と走ることできないが、それ以上に本当に素晴らしい国だった。

雪山が迫る美しい道。数年前まで盗賊多発地帯とは全く思えないとても穏やかな道だった Photo: Gaku HIRUMA

トルコとジョージアの違い

 トルコとジョージアの一番大きな違いは宗教だ思う。トルコはイスラム教国家なのに対して、ジョージアはキリスト教国家だった。キリスト教とイスラム教の国では、様々なことが違う。

 日本では馴染みの薄いイスラム教の教えを体感できるのは、旅の醍醐味ともいえる。日中、ラマダンで静まり返る町はひとたび陽が落ちれば、連日お祭りの様に賑やかだったし、モスクから大音量で流れて礼拝を告げるアザーンは、聞けば聞くほど馴染んできて心地良くなってきた。

 キリスト教も宗派によって教会の造りなどが違っていたのも興味深かったし、大聖堂の厳かな雰囲気は心やすらかにしてくれた。

 トルコとジョージアは食でも大きく違っていた。それはお酒と豚肉だった。イスラム教ではお酒は飲めず、豚肉は食べられない。お酒に関してはイランのように全く売っていない国もあれば、トルコのように普通にスーパーで買える国もあることにはあるが、一様に高かった。しかし豚は不浄の生き物とされ、イスラム教圏の国ではどこにも売っていなかった。

 コーカサス地方のジョージアとアルメニアは世界で最も早くからキリスト教を国教に定め、トルコやイラン、中央アジアなど周りにイスラム教国家が多い中、今日までキリスト教の信仰を守り抜いていた。お酒と豚肉好きにはこれほど嬉しいことはなかった。

日本の居酒屋のようなバー

 当然お酒も豚肉も食べれるのだけど、嬉しいのはバーの敷居が低くて日本の居酒屋のような雰囲気だったことだ。ビールやワインを飲み、一皿200円から400円くらいのつまみを頼むと、日本の居酒屋サイズの皿に乗ってくる。これが本当に驚くほど美味しい。

 味付けはビールが進むような濃い目が多いけど、香草やニンニクをうまくアクセントに使ったり、何種類ものスパイスと野菜を煮詰めて作るソースをかけたりと、料理とお酒がマッチしていてお酒とご飯が驚くほど進む。

単純なポテトフライだけど、香草やハーブを上手に使っており驚くほど美味い。ビールが進む濃い目の味付け。ジョージアのバーは日本の居酒屋の様な雰囲気だった Photo: Gaku HIRUMA

 飾り包丁が入れてあったり、野菜の皮で花びらのように飾って出てきたりと、日本の居酒屋のようなジョージアのバーが大好きになってしまった。何もない町でたまたま入ったバーの食事が美味し過ぎて、連泊を余儀なくされてしまったことも珍しくなかった。

 トルコのイメージが強いケバブだけど、ジョージアのケバブは野菜のソースが上手く絡み合いジューシーな仕上がりで、僕は断然ジョージアのケバブの方が好きだった。

塔の家が立ち並ぶメスティア

 さて、本題のメスティアを目指す話だ。ジョージアにはスワネティ地方と呼ばれるそれはそれは美しい山岳地帯があり、コーカサスのハイライトになっていた。その山岳地帯の山奥に世界遺産に登録されている塔の家が立ち並ぶメスティアの町がある。

 塔の家は報復の風習に備えるために各家が塔を建てたものらしい。風習は過去のもではなく、今現在も脈々と受け継がれているようだ。作られた理由は物騒だけど、美しい山奥に突如として塔の家が並ぶ様は、おとぎの国に迷い込んだような錯覚になり、旅人を惹きつけてやまない。

メスティアの塔の家。復讐の風習から造られたものだけど、その風景は旅人を惹きつける Photo: Gaku HIRUMA

 その先にヨーロッパ最後の秘境と言われるウシュグリ村を通って峠を越え、大都市のクタイシに抜けるルートがあると聞いた。4WDの車でも越えるのが難しいようだったが、そのルートを目指すことにした。

 まず麓の拠点の町となるズグジジまで行き買い出しをする。メスティアまでは約140km、山道なので3日分の食料を買ったが、途中商店や湧水もあるのでそこまでは買い込む必要はなかった。

 メスティアまでの道は数年前に完全な舗装路になった。どんどん近づく雪山と穏やかな牧草地が広がり、綺麗な景色を楽しめる。しかしつい最近までは山賊や強盗が多発し、地元の人も恐れる地域だったらしい。塔の家の報復の風習といい強盗といい物騒に思うが、今は嘘のように穏やかなところで人々は優しい。自転車で安心して走れるようになったのは本当にありがたい。

メスティアを目指す道。スワネティ地方は、ジョージアのハイライトになっている Photo: Gaku HIRUMA

 メスティアの中心地も山奥とは思えないほど、綺麗に整備されていた。それでも一歩通りを外れれば、昔ながらの塔を備えた家々が立ち並ぶ素晴らしい町だった。僕らは数日間の滞在を楽しんだ後、完全未舗装路となるウシュグリ村とその先峠を目指して走り出した。

悪路で泣く泣く引き返した山道

 やはり道路が舗装されているか、されていないかでは風景が全く異なる。走る車は一日数台に減って人々や村々は素朴になる。本当にタイムスリップをしたかのような感覚を味合うことができる。

 こういう所を走れるのは本当に自転車旅の醍醐味だと思うのだが、いかんせん僕らが通った時は連日の雨により、道路コンディションは粘土質の悪路に変わり果て最悪だった。

峠越えを諦めて、ピックアップトラックを半ば強引にヒッチハイクして、メスティアまで戻った Photo: Gaku HIRUMA

 峠道では足を取られて自転車を押すことすらままならない。峠では「膝まで雪が残っている」と教わった上に冷たい雨に打たれて心が折れてしまった。

 たまたま通ったヒックアップトラックを半ば強引にヒッチハイクして、メスティアまで戻り、泣く泣く来た道を引き返した。同じ道の山道を降りる羽目になってしまったのだけど、それでも来てよかったと思わせる素晴らしい風景だった。

昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ Take it easy!!

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