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Sunday, April 26, 2020

今こそコンバット越前のセリフ「せっかくだから」を発動させる時|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - gentosha.jp

相変わらず、世界まるごと自粛体勢だが、真っ先に自粛対象となったのは、イベントやライブなどである。
確かに、ああいったイベント会場というのは三密を越えて、四密ぐらいになっているし、仮に一密倒しても「奴は四天王の中でも最弱……密の面汚しよ……」みたいな展開になるに決まっているのだ。

それにオタクは、ステージやビジョンに推しが出た瞬間「ンフッ」とか「オウフッ」とか一斉にえづき出す可能性があるので非常に危険である。

よって、今回まず最初に大きくダメージを受けたのは、イベントやライブなど、推しが来ると言われたらすぐに馳せ参じる現場系、鎌倉武士オタクである。

今でも口癖を越えて鳴き声が「ライブ行きたい……」になっている者も多い。
配信などもしているが、やはりそれはライブとは別物である。

しかし、最近そういった者たちが、浮いたお金でコスメを買ったりしていると聞いた。
すでに死に化粧をするフェーズに入ったというワケではない、確かにオタクは推しのことで良く死ぬが、大体人生一イイ顔で死んでいるので化粧の必要はない。

せっかくだから「次推しに会う時の為に、ダイエットや自分磨きをしよう」という方向に、すでにシフトしているのだそうだ。

いくらなんでも前向き過ぎんか、と思うかもしれないが「推しが出れば無課金」など、計算が合わないポジティブさを与えるのが推しなのだ。

だが、推しがいなくても、オタクでなくても、この「せっかくだから」という精神は大事な気がする。

その昔「デスクリムゾン」というゲームがあり、その主人公として「コンバット越前」というキャラがいた。

もう主役の名前の時点で予想はつくと思うが、クソゲーである。
彼の代表的なセリフに「せっかくだから俺は、この赤い扉を選ぶぜ!」という言葉がある。

何がせっかくなのか全く不明であり、そもそも扉は1つしかなく、赤くすら見えないという、クソゲーらしい迷セリフとして有名なのだが、今思えば深い言葉である。

「せっかく」に理屈などいらないのだ。

どんな状況でも、それを「好機」と捉えるかどうかは自分次第、ということである。

現在の状況があまり良くないのは百も承知だが、その中に無理やり1個ぐらい「好機」を見出してみても良いのではないだろうか。

ただ「せっかくだから、自分磨きする」というのは、推しというシャブを打った人間の発想なので、常人は「自宅待機期間を生かして資格を取る」など、そこまでストイックになる必要はないと思う。

「気になっていた、アニメや漫画、映画を見てみる」程度で良いのだ。

何故なら、四十路近くなったことにより「気になる」レベルでは、足が動かないということが分かっているからだ。

映画も「これ面白そうだな、ちょっと見に行きたい」と思っている内に公開期間が終了するというのが、もはやデフォルトである。
最近では「レンタルになったら見よう」ですらなく「アマプラ落ちしたら」になってきている。
仮にアマプラに入っても「今はとても初見の映画を理解できる脳の容量が残っていない」という日が358日ほどあるので、なかなか見るに至れないのだ。

つまり「ちょっと気になるから機会があったら見たい」というのは「行けたら行く」と同義で、もはや「見ない」になりつつある。

今はそんな「気になると言いながら、見ないまま死ぬであろうもの」を見る機会なのではないだろうか。
単純に「時間があるだろうから」というだけではない。
現在、在宅支援として、漫画や動画などが、いつになく無料配信されているからだ。
先日まで、横山光輝三国志が60巻中59巻が無料で配信されていたほどだ、最終巻だけ買ってねという商魂は見せているが、大サービスには変わりない。

なかなか足が動かない理由には当然「気になるけど、金を払うほどかと言われたら」問題がある。
ケチくさいと思うかもしれないが、資金が有限すぎるため「気になる」レベルではなかなか手が出せないのだ。

横山光輝三国志も、誰もがネット上で一度は見たことがあり、気になっている人も多いだろうし、読めば面白いだろうということもわかっている。
しかし、今から全60巻、買うなりレンタルしたりするというのは、若干敷居が高い、漫画喫茶で読むにしても「通い」が必要な気がする。

他にも、現在いろいろ無料で公開されているので、探せば「気になっている」で止まっていたものが、タダで提供されている可能性がある。
「せっかく」だから、そのような「好機」を探してみても良いのではないだろうか。

ちなみに、あと15分ほどで「刀剣乱舞」のミュージカル「刀ミュ」の無料配信が始まる。

刀剣乱舞は好きであるが、生まれながらの二次元者である自分が、2.5次元、そもそもミュージカルを楽しめるのか、それ以前にチケットが取れるかもわからないし、近くでは絶対やらないので、遠征する時間、交通費、何とかプラスに払う手数料、という諸問題があり、まさに私にとって「気になるけど見ないまま死にそうなコンテンツ」であった。

それをタダかつ合法で見られるとはまさに好機だ。

そしてこの好機を逃さぬことにより「オレ……この自粛が終わったら刀ミュ見にいくんだ」という、未来への希望、もしくは死亡フラグを立てることができるかもしれない。

新しい希望と言う名の沼が出来るかもしれない、という意味でも「せっかくだから」というコンバット越前で、今まで気になっていたがスルーしていた赤い扉を開いてみるものありである。

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April 27, 2020 at 04:00AM
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