2月29日、新型コロナウイルスへの政府の対応に関する安倍晋三首相の記者会見が行われた。
土曜日の夕方という比較的国民が視聴しやすい時間帯に記者会見をセッティングしたことから、何か思い切った施策発表や丁寧な説明がされるのかと思いきや、実際は具体性に欠け、令和元年度予算の予備費として残っている2700億円以上を活用した第2弾の緊急対策は今後詳細を詰めるということであった。
突然の休校要請については、「十分な説明がなかった。それは確かにそのとおりだ」と認めたが、記者会見の時間はわずか35分程度、「まだ質問があります」という声が記者席から挙がっているにも関わらず、司会の長谷川栄一内閣広報官は「以上をもちまして記者会見を終わらせていただきます」と打ち切り。
一体何のための記者会見だったのか。
その後よっぽど重要な公務があったのかと首相動静を見たら、自宅に帰宅したらしい...。
当然、現場にいた記者からは批判の声が挙がっている。
「まだ質問があります」と声を挙げたジャーナリストの江川紹子氏は、ツイッターに連続投稿。
「安倍首相の記者会見、一生懸命「まだ聞きたいことがあります」と訴えたけど、事前に指名されて質問も提出していたらしい大手メディアの記者に対して、用意されていた原稿読んで終わりでした。」
「専門家会議では議論してない全国一斉休校要請について、他の専門家に相談したのか、今回の判断した根拠やエビデンスは何か、それに伴う弊害やリスクとの検討はどのようにやったのか、期待される効果や獲得目標は何か…その他いろいろ聞きたいことはあったんだけど」
首相動静を引用して「うちに帰るだけなら、もう少し答えてくれてもいいじゃん」と嘆いた。
また、ジャーナリストの神保哲生氏は、フリーのジャーナリストに質問させない現状を長年許している記者クラブも批判した。
「独演会ならまだいいんですよ。すべて官邸官僚が事前に用意した答弁をベタ読みしているだけなところが問題なんです。しかも質問まで官邸官僚が事前に取りまとめて、その答えも用意し、当てる順番まで決まってる。でも一番の問題はそれに唯々諾々と従ってる内閣記者会の記者たちです。」
「官邸官僚たちが予め時間を計りながら原稿を用意しているはずですが、総理がそれを早く読みすぎて時間が余るとやばいんです。事前に質問を取りまとめてない記者を当てるわけにはいかないから。以前、時間が余った時、私しか挙手してないのに内閣広報官は手を挙げていなかったNHKの記者を当てました。」
「僕は手を挙げ続けても当てられない7年間の前に、会見に入ることさえできない20年がありますから、これくらいは大したことないって思えますけど。その間にフリーでも記者クラブと対等に質問ができた民主党政権の3年間がありますが、それが既存メディアを安倍政権に走らせる一因にもなってるわけです。」
相変わらずの「説明責任」の無さ
こういった「説明責任」の無さは今に始まったことではない。
2019年を振り返る記事で書いたように、特に昨年以降顕著になっており、政治不信が高まる一方となっている。
関連記事:【2019年を振り返る】答責性の欠如、官僚機構の悲鳴、政治参加の多層化、日本政治3つの潮流
首相が記者会見で度々言及していた「結果責任」に関しては、今後の経過を見届けていくことしかできないが、論語に「民信無くば立たず」という言葉があるように、国民の信頼と協力なくして、政治は成り立たない。
そのためには、情報公開と透明性が最も重要であり、記者からの質問に答えることは最低限の振る舞いであろう。
今回の危機に際して評価を高めている政治家・首長は、自ら前面に立って、SNSも駆使しながら説明に努めており、千葉市の熊谷俊人市長は、個別のリプライ(質問)に対して回答までしている。
1億人規模の国の宰相であり、SNSで国民とコミュニケーションを取るべき、とまでは言わないが、国民への説明を重視していない、そんな姿勢がよくわかる安倍首相の記者会見であった。
関連記事:新型コロナウイルスへの対応に見る次世代の政治リーダー像
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March 01, 2020 at 09:24AM
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