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Wednesday, May 1, 2024

JWSTが有名な「馬頭星雲」の頭頂部を”どアップ”で撮影!かつてない鮮明度! - ナゾロジー

馬の頭頂部をズームアップで撮影に成功!

馬頭星雲は、オリオン座に位置する若い星や様々な星雲から構成される大規模なグループの「オリオン座分子雲」の中に存在しています。

星雲とは、星間ガスや宇宙塵が重力で結びつき集まった、その名の通り宇宙に浮かぶ雲のような天体です。

星雲には、電離することで輝く散光星雲と、自身では光を発さない暗黒星雲の2タイプが存在しています。

馬頭星雲は可視光では見えない暗黒星雲で、その内部に光源もありませんが、近くにオリオン座シグマ星」と呼ばれる非常に大きな高温の星があり、それが放つ光によって強く照らし出されています。

(正確にはシグマ星の強力な紫外線により電離して輝く散光星雲が背景にあるため、それに照らし出されている)

また馬頭星雲はこの強い光放射で外側からゆっくりと浸食されており、今から約500万年後には星雲のガスが完全に分解されて、馬の頭は消えてしまうと予想されています。

ヨーロッパ南天天文台が2002年に撮影した「馬頭星雲」の画像。馬の頭が左を向いているように見える
ヨーロッパ南天天文台が2002年に撮影した「馬頭星雲」の画像。馬の頭が左を向いているように見える / Credit: ja.wikipedia

そして今回、NASAESAを中心とする研究チームは、2021年12月25日に打ち上げられた赤外線観測用の「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」を使って、馬頭星雲を新たに撮影することにしました。

使用されたのはJWSTに搭載されている「中赤外線観測装置(MIRI)」と「近赤外線カメラ(NIRCam)」です。

チームは計23個のフィルターを組み合わせることで、直径20ナノメートル未満というごく微細な粒子からの発光も捉えることに成功し、これまでにない驚異的な解像度を達成しました。

特に今回の撮影でターゲットとしたのは、馬の頭の右上に当たる部分です。

馬頭星雲の右上部分にフォーカス
馬頭星雲の右上部分にフォーカス / Credit: ESA – Webb captures iconic Horsehead Nebula in unprecedented detail(2024)

こうして撮影されたのが以下の画像です。

馬の頭にズームインすることで、従来では見られなかった星雲の微細な構造や巻きひげのような形、それから細くたなびくフィラメント構造まで捉えられました。

これらはどれも馬頭星雲の中では初めて確認された構造です。

近赤外線カメラで捉えられた馬頭星雲のズームアップ
近赤外線カメラで捉えられた馬頭星雲のズームアップ / Credit: ESA – Webb captures iconic Horsehead Nebula in unprecedented detail(2024)

また、馬頭星雲は天文学的に見ると、「光解離領域(Photodissociation region:PDR)」に属するものとして知られています。

これは星間空間において、ある恒星からの強力な紫外線放射により、星間物質(分子状の塵やガスなど)から電子が弾き出され、通常とは異なる化学反応を起こしている領域を指します。

この光解離領域では塵やガスが混ざり合った非常に高温な状態になっています。

こうした光解離領域(PDR)は、新しい星が誕生する場所でよく見られるため、馬頭星雲の観察は恒星の形成プロセスを調べたり、あるいは星間物質が光の影響でどのように性質を変えるかを理解する上で、非常に重要なのです。

中赤外線観測装置で捉えられた馬頭星雲
中赤外線観測装置で捉えられた馬頭星雲 / Credit: ESA – Webb captures iconic Horsehead Nebula in unprecedented detail(2024)

研究チームは今回の観測結果に関して、「まだほんの始まりに過ぎない」と話しています。

次なるステップとしてチームは、馬頭星雲から放出される光を詳細に分析し、塵とガスの化学的な組成や、光の散乱の仕方に基づいて塵の大きさやガスの流れを解明していく予定だと話しました。

こちらは馬頭星雲にズームインしていく様子を映像で再現したものです。

この映像を見ると、馬頭星雲の周りの様子や今回の撮影でどこにアプローチしたのかがよく分かります。

(※ 音量にご注意ください)

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