箱根・大涌谷の噴煙 photo by gettyimages
日本列島の真ん中に穿(うが)たれた深さ6000kmの大地溝「フォッサマグナ」。数回にわたって、フォッサマグナの形成に関する海洋地質との関係についてご紹介してきました。このうち、フォッサマグナの南側の形成に関係している考えられているのが、フィリピン海プレートをはじめとした、太平洋のプレート活動です。
とくに、相模湾の南東の延長部、房総半島の南東沖には、北米プレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートの3つのプレートが一点で交わる房総沖海溝三重点は、背後に伊豆半島や丹沢山地、箱根や富士山といった火山帯といったフォッサマグナの形成に関係するポイントが控えています。
参考記事:フィリピン海プレートによって、はるばる南から運ばれてきた伊豆半島…なんと、南部フォッサマグナは「日本列島との衝突」でできた
今回は、これらの地質学的に貴重なスポットを実際に目で見て、体感できる伊豆半島ジオパークと箱根ジオパークをご紹介したいと思います。いずれも人気のある観光地ながら、貴重な地質スポットや、見学や学習できる科学館などに恵まれています。ぜひご参考にしていただきたいと思います。
*本記事は、『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
フィリピン海プレートの活動による露頭や特徴的な地形が見られる「伊豆半島ジオパーク」
伊豆・小笠原弧の衝突にともなう、南部フォッサマグナでのさまざまな現象を見るのに最適なのが伊豆半島ジオパークです。伊豆半島全体と、その北の箱根との境界までが含まれるという広大さで、行政の中心は伊東市(静岡県)、本拠は修善寺にあります。
その地質学的な「売り」はやはり、フィリピン海プレートに乗って南からきた伊豆・小笠原弧の火山島です。伊豆大島よりも大きいものもある数々の火山島は、火山活動の様相も東西南北でさまざまで、その多様性に対応して、伊豆半島ジオパークでは興味深い露頭や地形がたくさん見られます。
バラエティに富んだ地質スポット…観光名所も、じつは貴重な遺産
たとえば、伊豆半島では明治時代まで金の鉱山が存在し、稼働していました。代表的な金山である土肥金山(とい・きんざん)は、佐渡金山に次ぐ生産量を誇っていたようです。
伊豆で金が豊富に採れるのは、マグマによってできた熱水が岩石の割れ目に入り込み、そこに融けこんだ金が、熱水が冷えると沈殿して鉱脈となったためです。土肥金山も伊豆半島ジオパークに入っています。
また、西海岸には放射状の柱状節理があります。柱状節理とは岩石の中にマグマが入り込んで収縮し、柱状になったもので、しばしば安定した形状である六角柱になります。なかには、六角柱が何本も連なったようになっているところもあります。とくに浄蓮の滝にはよく発達した柱状節理があります(伊豆半島ジオパークによる浄蓮の滝の柱状節理の解説)。
そのほか、1回の噴火だけでできあがった、大室山のようなかわいらしい単成火山があったり、一碧湖のように噴火口に水がたまったものや、東伊豆の城ヶ崎海岸には大きなポットホール(硬い岩盤の割れ目などの弱いところが浸食されてまるい穴があいたもの。遊歩道がなく、見学には危険を伴うためガイドツアーの利用が必要)があったりと、火山や波の浸食がつくりだした非常にバラエティに富んだ地形があり、車で移動すれば短い時間で観察することができます。
箱根火山を中心とした神奈川県西部の2市(小田原市、南足柄市)、3町(箱根町、真鶴町、湯河原町、)で構成た箱根ジオパークは、プレート境界という世界的にも特異な場所に形成された箱根火山と周辺の地形・地質を大切に守りつつ、国際的な観光に活用し、併せて地域の教育、産業、防災などにも役立つ取組みを目指している。
もちろん、火山につきものの温泉もいたるところにありますので、観光地としての雰囲気も十分に味わうことができます。
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