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Sunday, August 13, 2023

【レビュー】夏季特別展「徳川家康」―天下人への歩み― 徳川 ... - 読売新聞社

今年は徳川家康関連の企画展が東海地方を中心に多く開かれています。尾張徳川家に由来を持つ徳川美術館でも夏季特別展として「徳川家康―天下人への歩み―」が始まりました。

徳川美術館に隣接する蓬左文庫展示室では、史料を中心に家康の生涯をたどり、また、本館展示室では、家康亡き後に尾張徳川家へ贈られた駿府御分物(家康の遺産)を中心に展示することで、家康の人となりや愛好したものに焦点を当て、家康像を紐解いてゆきます。

《東照大権現像 伝狩野探幽筆》(江戸 17世紀)徳川美術館
展示期間〜8月20日まで

はじめに 尾張徳川家と徳川美術館

徳川美術館は、その名が示す通り徳川家と縁が深い美術館です。徳川美術館が建つ一帯は、尾張徳川家2代藩主光友が、隠居所として大曽根屋敷を造営し移り住んだのが始まりです。その後、明治時代に尾張徳川家の邸宅となったのちに一部が名古屋市へ寄付され、昭和7年に徳川園が、続いて昭和10年に徳川美術館が開館しました。

徳川園入口 正面奥に徳川美術館の入口が見えます。

徳川美術館は、19代当主徳川義親が大名文化を後世に伝えることを目的として開館し、御三家筆頭の尾張徳川家に受け継がれてきた宝物の数々を所蔵しています。所蔵品は大名家伝来家宝のコレクションとして日本最大の規模で、保存状態も大変良いのが特徴です。

第一部 天下人へのあゆみ ~豊富な資料で家康の生涯をたどる~

前半は家康の生涯で節目となる出来事をたどりながら、天下を統一し大坂の陣で豊臣家を滅ぼすまでを追います。有名な戦いを描いた合戦図屏風や、刀剣や甲冑などの武具、史実を知る上で貴重な資料が数多く展示され、それらのほとんどが徳川美術館または蓬左文庫の所蔵品です。

《石合戦図 二幅対 森村宜稲筆》(明治-昭和 19-20世紀)徳川美術館

背負われて子どもたちの石合戦を見ていた竹千代(家康)が、どちらのグループが勝つか見事に当てたという言伝えが描かれています。

《桶狭間合戦之図》(江戸 18-19世紀)名古屋市蓬左文庫
展示期間〜8月20日まで

あの、有名な桶狭間合戦の布陣図がここにあります!名古屋市民にはおなじみの「鳴海」「熱田」「大高」などの地名が見えます。

長篠合戦図屏風の解説パネル

合戦図屏風は多数展示されており、重要な戦いの場面はほぼ網羅されています。解説パネルがついていて、どこにどんな武将が描かれているかわかるようになっています。子ども向けの説明では、先の石合戦で登場した竹千代(家康)がガイド役をしていますね。このパネルだけではなく、クイズやすごろくで遊べる小学生向けの楽しいリーフレットも用意されています。

《常山紀談 十五冊の内 巻二 湯浅常山(元禎)》(江戸 19世紀)名古屋市蓬左文庫

今期の大河ドラマで視聴者がざわめいた「信康事件」について書かれています。この書物の中では、徳姫が兄・信長にあてて、夫・信康の悪行を書いて送ったというくだりがあります。

《長久手記 六帖の内 大沢繁豊著》(江戸 18世紀)個人蔵

小牧・長久手の戦いを描いた屏風絵は多いのですが、江戸時代に書かれたこの合戦記は各武将の馬標や武将のイラストが入っておりユニークです。

《大坂冬陣備立之図・大坂夏陣図》(江戸 17-18世紀)名古屋市蓬左文庫

大坂冬の陣・夏の陣といえば将軍となった家康が豊臣家を滅ぼし、名実ともに天下を取ることになった戦いです。冬・夏の図が両方揃うと歴史的瞬間を感じます。

重要文化財《刀 無銘一文字 名物 南泉一文字》(鎌倉 13世紀)徳川美術館

歴史の証人といえばこの刀。足利将軍家から豊臣家、そして家康の元へ渡ってきました。

第二部 ゆかりの品から紐解く徳川家康 ~大切に伝えられてきた資料からわかる家康の人となり~

後半では家康が愛用していた品々が「身の回り品」、「武具や刀」、「学問と政治」、「医学」、「茶の湯道具」、「たしなみ」、「交易と舶来品」など、いくつかのトピックに分けて展示されています。これらの品を通して、家康がどのような人物だったのか浮かび上がってくるようになっています。

徳川家康自筆書状など

家康は筆まめで、家族宛の手紙が多数残されています。右の掛け軸は、家康から息子・福松(松平忠吉)に宛てた手紙で、教育方針について書かれています。

重要文化財《紫地葵紋付葵の葉文辻が花染羽織 駿府御分物》(桃山-江戸 16-17世紀)徳川美術館
展示期間〜8月20日まで

この羽織の紫は家康お気に入りの色で、他の衣類でもこの紫を使っているものがあるそうです。また、この記事の最初に掲載している《花色日の丸威胴丸具足》は本展のメインビジュアルにもなっている華やかな具足。今回は滅多に見られない後ろ側も公開されており、裏側もじっくり見ることのできる貴重なチャンスです。

重要文化財《続日本紀 四十巻の内 巻一 駿河御譲本》(江戸 慶長年間 1596-1615)名古屋市蓬左文庫

家康は天下をとってからも学問に勤しみ、読書に励みました。天下を太平に治めるには教養が必須だと理解していたのでしょう。

藤原定家小倉色紙「こひすてふ」と家康による模写「こひすてふ」 徳川美術館
(藤原定家筆「こひすてふ」は展示期間〜8月20日まで)

家康は藤原定家を好み、よく書写をしました。家康といえば、一般的には「質実剛健」のイメージがありますが、実際は多趣味で知的好奇心にあふれ、身の回り品は格調高いものが多いです。このような雅な教養は、もしかすると今川時代に育まれたのかもしれません。

《香木 羅国》徳川美術館

家康の興味深い側面として、香木マニアだったことがあります。東南アジアと積極的に交易を進めた家康ですが、その際に珍しい香木を送って欲しいと相手国に依頼の手紙を出しています。手に入れた香木は薬の原料となることもありましたが、家康はいつも懐に香木を入れ、香りを楽しんでいたそうです。また、家康みずから調合した整髪料の「レシピ」も残されています(右奥)。

こうして、今に残された品々を見てゆくと、教養と知識を大切にし、身内に対して細やかに気を使う家康の人となりが伝わってくるのではないでしょうか。

貴重な遺品を守り伝えた尾張徳川家

《駿府御分物御道具帳 十一冊の内》(江戸 元和2-4年 1616-18)徳川美術館

この膨大なコレクションの礎となった「駿府御分物」を記した台帳です。尾張徳川家は代々大切に家康の遺品を守り伝え、明治維新や戦中戦後にあっては散逸の危機にあった他家の大名道具を買い集めて保存しました。そして今があります。(ライター・岩田なおみ)

夏季特別展「徳川家康―天下人への歩み―」
会場:徳川美術館/名古屋市蓬左文庫(名古屋市東区徳川町1017)
会期:2023年7月23日(日) ~ 9月18日(月)
休館日:月曜日 ※ただし8月14日、9月18日は開館
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料:一般1600円/高大学生800円/小中生500円
※20名様以上の団体は一般200円、その他100円割引
※毎週土曜日は小・中・高生入館無料
アクセス:なごや観光ルートバス「メーグル」名古屋駅バスターミナル11番のりば 名古屋駅発着で平日30分~1時間に1本、土・日・休日は20分~30分に1本運行。JR・名鉄瀬戸線・名古屋市営地下鉄「大曽根駅」より徒歩約15分、名古屋市営バス「徳川園新出来」停留所より徒歩約3分、など。
主催:徳川美術館・名古屋市蓬左文庫・読売新聞社
後援:NHK名古屋放送局
協力:名古屋市交通局
詳しくは徳川美術館の公式サイト

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