「経営の神様」と称された稲盛和夫氏にとっては、不況期ですら「ビジネスチャンス」だったようだ。自社の製品・サービスが売れなくなったときに企業は、どのような経営戦略を選ぶべきなのか。稲盛氏が達した結論は、「超高収益・高年収」な企業として有名なキーエンスと同じだった。(イトモス研究所所長 小倉健一)
経営の神様・稲盛和夫氏が説いた
「不況時は新しいことを始めるチャンス」
「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏は、売り上げが伸びない、例えば世の中が不況になったときのピンチなどをどう切り抜けてきたのだろうか。結論から先に述べれば、「自分の内なる強みを生かす」戦略をとることに尽きる。
「不況時には、お客様にも時間的な余裕があり、また何か新しいものを求めておられるはずです。そのときにこそ、積極的にお客様をまわり、新製品のアイデアやヒント、あるいは今までの製品に対する要望やクレームなどをよく聞いて、それを会社に持ち帰り、新製品開発や新市場創造に役に立てていくのです。また、現場の開発技術陣の中にも、『ああいう製品を開発してみたい、こういう技術に挑戦してみたい』と日頃から思っている人はたくさんいるはずです。しかし、忙しいときには、なかなかそういうものに手をつけることはできません」(稲盛和夫著『繁栄する企業の経営手法』ダイヤモンド社)として、稲盛氏はこんな例え話をしている。
お菓子屋さんを経営していたとすると、順調に成長しているとき、よく売れているときは既存のお菓子(商品)を作ることに手一杯になっていがちだ。「新しい材料や新しい技術を使って、新しいケーキを作ったらきっと売れると思うのだけどなあ」と感じてはいるものの、忙しすぎてそれができない。しかし、不況になれば、従来のお菓子は思うように売れなくなり、手が空いてしまうもの。
そんなときこそ、かねて考えていたケーキ作りに挑戦する絶好のチャンスなのではないかというのだ。
不況でモノが売れないというのは、物事の一面であり、実は自分に余裕ができるタイミングであることを念頭に、不況こそ挑戦せよと稲盛氏はいうのだ。
では、新しい製品を開発したり、新しい市場に打って出たりする必要があるときに、どうやって戦略を構築したらよいだろうか。そこで、経営学で有名な二つの理論をご紹介するとともに、その問いに対する稲盛氏の「答え」をお伝えしよう。
稲盛氏の結論は、「超高収益・高年収」な企業として有名なあのキーエンスと同じだったのだ。
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