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Tuesday, March 7, 2023

ヘビに足を生えさせる? 奇抜な研究の深~い意味 - 読売新聞オンライン

 1月に九州へ出張した際、有名な国宝、「 漢委奴国王(かんのわのなのこくおう) 」の金印を見たくて、常設展示(※)している福岡市博物館に寄ってきた。古代中国・漢の皇帝が約2000年前、福岡市付近を治めていた「奴国」の王に授けたと言われるものだ。金印の由来については諸説あるが、薄暗い展示室の中でその輝きを見つめると、人類が積み重ねてきた悠久の時を感じさせられた。
(※金印は他館に貸し出されるため、2023年3月9~22日はレプリカ展示の予定です)

 長い時を超えて目の前に現れた出土品や化石に心引かれるのは、時の流れが常に一方向で、逆行できないからだろう。古代を自分が訪ねることはできない。

 しかし、博物館を後にして、福岡市郊外の九州大学 ()() キャンパスへ行くと、そこでは1億年以上にわたる生物の進化を巻き戻そうとする研究が進められていた。理学研究院の熱田勇士講師(42)が手がけるのは、「ヘビに足を生えさせる」という挑戦だ。

 ヒトでもネズミでもヘビでも、生命の始まりは1個の受精卵だ。それが細胞分裂を繰り返し、様々な部分へと分かれていって、体の各部ができる。その途中で、「 (そく)(ばん)(ちゅう)(はい)(よう) 」という部分から「 ()() 」というふくらみができて伸び、ここから四肢が作られていく。

 体の形を決めるのは、DNAに刻まれた遺伝情報だ。ヘビは1億7000万年ほど前(ジュラ紀中期)に出現したとみられている。祖先は四足動物だったはずだが、進化の過程でDNAがどのように変化し、四肢を失ったのだろうか。大きな手がかりが、二つある。

 一つは、四肢の元になる細胞(前駆細胞)を作り出すのに重要な、いくつかの遺伝子だ。熱田さんは約8年前から四肢形成の研究に取り組み、遺伝子を絞り込んでいる。これらの遺伝子は、四足動物の側板中胚葉で働いているが、ヘビでは働いていない。

 もう一つは、四肢を形作る時に重要な役割を果たす「ソニック・ヘッジホッグ」というたんぱく質だ。ヘビは、ソニック・ヘッジホッグの遺伝子はもつが、四肢形成の際にその遺伝子を制御するDNA配列(エンハンサー)がなくなったり、壊れたりしている。

 熱田さんは考えた。「ヘビのDNAを操作して、エンハンサーを復活させ、さらに前駆細胞を作るための遺伝子が側板中胚葉で働くようにしたら、祖先が持っていた四肢をよみがえらせることができるのではないか」。昨年4月、その挑戦に踏み出した。

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