イギリスの彫刻家バリー・フラナガンによるブロンズ作品『ウサギ』がファサードを飾る。彫刻の森美術館など国 内の幾つかの美術館にも作品が所蔵されているが、ホ テル川久が所有する像が国内最大級の作品。またホテルの瓦には、北京の紫禁城と同じ瑠璃瓦が使用されいる。古代中国において皇帝しか使えない老中黄と呼ばれていた瓦を入手するために、マダム・ホリが北京へ20回も赴き交渉した結果、特別に47万枚の瓦を焼い てもらったという逸話が残っている。
南紀白浜に浮かぶ美しい文化遺産。
1989年のバブル絶頂期、総工費400億円という莫大な金額をかけて「世界の数奇屋」をコンセプトに創考されたホテル川久。1 階のロビーの天井は、フランスの人間国宝である金箔職人ロベール・ゴアールが貼り付けた19万枚もの金箔で覆われており、 ロビーに立つ24本の巨大な柱は、左官職人である久住章がシュトックマルモ技法によって仕上げた豪奢なものだ。ホテル川久 の創業一族で美術収集家でもあるマダム・ホリが収集したダリ、シャガール、ヘンリー・ムーア、横山大観、中尾淳などの作品が館内に惜しげもなく飾られている様は圧巻。文化資産としての 保存と継承をテーマに、2020年に開業したのが川久ミュージアムだ。国内随一の泊まれるミュージアムは、南紀白浜の新しい文化交流の場として注目を集めている。そんなホテル川久で今年、新たなプロジェクトとして、アーティスト・イン・レジデンスがスタートした。アーティストに出された課題は、「実在する夢」をテーマにした作品の制作プランを提出すること。審査の際には、作者の年齢も性別も名前も隠し、プランだけで厳正なる審査が行われた。審査員兼キュレーターは、板橋令子、黒沢 聖覇、陳暁夏代、服部浩之、原久子、宮本初音。60件を超える応募のなかから、第1回レジデンスアーティストとして選ばれた 稲垣智子、井上修志、植田陽貴、梅原徹、長嶺慶治郎、宮本華子 の6名が、5月の1カ月間、ホテル川久に滞在し作品を制作した。その成果展として『KAWAKYU ART Exhibition 2022』が6月に開催された。レジデンス滞在アーティスト、およびキュレ ーター推薦アーティストの合計12名のアーティストの作品が客室や浴室など館内のいたるところに展示された。
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シリアで発見され、メトロポリタン美術館の鑑定で2世紀に制作されたということが判明したビザンチンモザイク画。美術的価値だけでなく、歴史的価値も非常に高い壁画が4点、ロビー壁面に埋め込まれている。
オープンテラスデッキに天然温泉露天風呂が付いたプレジデンシャル スパ・スイートは247m²の広さ。客室の窓からは穏やかな田辺湾が一望できる。ダイニングに飾られているのは、ダリとヘンリー・ムーアの作品。
ホテル川久の浴室を使って展示されているのは、 梅原徹による人工物と自然物をテーマにしたインスタレーション作品『かたち/うた』。人間の手が加えられた白浜の自然風景を切り取っている。
川久の和室宴会場での展示、井上修志のインスタレーション『床を上げる』。“床を上げる”とは、慣用句で“寝具を片付ける“、つまり夢から醒めることを意味する。井上は、文字どおり床をあげ、その下には白浜で集めた廃棄物を敷き詰めることで、夢と現実の可視化を行った。
豪勢な金箔天井と優美なローマンモザイクタイルが床を埋め尽くすロビーに飾られた、しまうちみかによる、高さ2mを超える大型作品『Dog Head』。
イタリアの画家チェリベルティの巨大な天井画『愛と自由と平和』が描かれたホールに展示された稲垣智子の映像作品『Mirrors』。屏風を思わせる鏡にホテル川久で働く従業員たちが映る。
ドレスや館内随所にかけら れた刺繍入りのレースは、ベルリン在住のアーティスト宮本華子による『しろが消えていく。』。実父との関係性について複雑な感情を綴る思いが、ドレスの白を消すように刺繍糸で縫い込まれている。
和歌山県西牟婁郡白浜町3745
tel:0739-42-2662
全85室 全室バスタブ付き
1名¥25,000〜(朝、夕食付き)
ミュージアム
営)10:30~18:00
無休
料)一般¥1,000(中学生以下無料)
www.hotel-kawakyu.jp
www.museum-kawakyu.jp
※『フィガロジャポン』2022年9月号より抜粋
からの記事と詳細 ( 世界的に有名な芸術家たちの作品と対峙できるホテル川久(和歌山県) |Travel|Lifestyle|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン) - フィガロジャポン )
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