Pages

Friday, June 10, 2022

的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 699 大分空港を「宇宙港」に/下 - 毎日新聞

県立高校に宇宙コース新設

 大分空港を宇宙港にするという決定がされた後、大分県は、PR動画やウェブサイト、SNS(ネット交流サービス)などを活用して精力的に情報発信をしています。

 宇宙活動の領域でも、すでに契約けいやくを結んだヴァージン・オービット社(698回に掲載)以外の米企業きぎょうも大分空港の利用について検討しているようです。今年2月に大分県は、米シエラ・スペース社と、宇宙輸送船のアジアでの着陸拠点きょてんとして大分空港を活用することを検討するパートナーシップ協定を結びました。

 シエラ・スペース社が開発中の宇宙往還機うちゅうおうかんき「ドリームチェイサー」(写真1)は全長9メートル。最大で約6トンの荷物を積むことができ、順調に行けば2023年にも米国内からロケットの先端せんたん搭載とうさいして打ち上げ、国際宇宙ステーションに食料や水などを届ける予定です。そして地球に帰還きかんする際には、宇宙での成果物をせて、航空機のように空港に着陸します。大分空港にもどるドリームチェイサーの姿を早く見てみたいですね。

 こうした盛り上がりのなか、大分県教育委員会は5月27日、国東くにさき市の県立国東高校(写真2)に「宇宙に関するコース(仮称)」を24年度に新設すると発表しました。「宇宙港」計画の進展とともに、関連する産業の蓄積ちくせきも期待され、そのための働き手を育てる必要があるのでしょう。県教委によると、公立高校における宇宙専門コースの設置は、全国でも珍しいといいます。

 「宇宙に関するコース」は普通科ふつうかに設置し、全国から生徒を募集ぼしゅうするそうです。来年秋ごろまでに具体的なカリキュラムを検討し、大学や企業とも連携れんけいして、外部講師の授業も想定しています。国東高校は大分空港から車なら10分くらいと立地も非常に良く(図)、「全国から宇宙に志をいだく若者を集めたい」と関係者は張り切っておられます。

 日本には、宇宙とつながりの深い町がいくつもあり、そこでは子どもたちの教育にも宇宙色が加味されています。たとえば「宇宙にいちばん近い町」として有名な鹿児島県肝付町きもつきちょうには、県立のなんしゅん高校が、15年に中高一貫校ちゅうこういっかんこうとして設立されました。ここには宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、研究者・技術者たちも授業に訪れています。また、現在民間ロケット発射場の建設が進められている和歌山県串本町くしもとちょうの県立串本古座高校も、宇宙専門コースの新設を計画しているそうです。

 国東高校では、宇宙コース設置に先駆さきがけて、来年度から「総合的な探求の時間」の授業で宇宙に関係した内容をあつかうことも検討しているそうです。大分県では、さらにいくつかの高校でも、人工知能(AI)など先端技術せんたんぎじゅつを学んだり、地域活性化のために働く青年を育てたりするために新たな学科やコースを設けるなど活発な動きが出てきています。

 このような宇宙と連携した高校教育の青写真がどのように具体化していくのか、私も非常に関心と期待をもって見つめているところです。みなさんも人ごとではありませんね。


的川泰宣まとがわやすのりさん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍かつやくしてきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉めいよ教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣まとがわやすのりさんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載れんさい開始。カットのイラストは漫画家まんがか松本零士まつもとれいじさん。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 699 大分空港を「宇宙港」に/下 - 毎日新聞 )
https://ift.tt/ldz38FD

No comments:

Post a Comment