6月5日、京の台所・錦市場に位置する創業95年の名物銭湯・錦湯が閉業した。2週間前に突如玄関に張り出された「閉業のお知らせ」に多くの錦湯ファンから驚きの声が上がり、最後の週末は多くのファンが訪れ大変な賑わいをみせた。
1927年(昭和2年)から続く貴重な町家建築の銭湯で、昭和レトロな雰囲気が醸し出す店内には、今ではなかなかお目にかかれない常連客の脱衣かごである柳行李がずらりと並び、扇風機やマッサージ器、体重計、番台に至るまで昭和時代からずっと現役で活躍し続けてきた様が何とも懐かしい。
錦湯と言えば、落語の寄席や写真展、芝居など定休日にはしばしばイベントが行われる銭湯として名を馳せ、話題が尽きない風呂屋だった。(ちなみに私は市議時代、選挙の立会演説会にも使わせて頂いた)。次々と新しいことをする為、マスコミからはネタに困ったときの駆け込み寺のような存在でもあった。
「面白そうなことは何でもやろう」という型破りな店主もまた錦湯の名物だった。それだけに閉業が惜しまれる。ファンの間からは「なぜ突然?」「ご病気?」という声も聞かれるが、その真相を店主・長谷川泰男さん(75)に聞いた。
--なぜ閉業を?
「最近、地震も頻発してるでしょう。正直、老朽化も酷いし、耐震もあかん。ちょっと大きな地震がきて壊れたりしたら困るでしょ。何より壊れてから辞めても後悔するでしょう。耐震化するにも建て替えるにも莫大な費用が掛かるし、現実的に無理やんか。せやから、いつかは辞めなあかん。それが今やと思ってね」
--なぜ、今なんですか?
「コロナの時に閉めるというのも卑怯でしょ。それはやっぱりあかんやろ。負けたみたいで(笑)。コロナもやっと落ち着いてきたから、そろそろええやろと思ってね。私も75歳になって後期高齢者になりましたしね。潮時やなあと思い出したら一気にその思いが強くなって。性格からして決めたら早いねん。もうやめよと思ったのが2週間前やね。まあ、元気なうちに惜しまれながら辞めるぐらいがちょうどいいと思ってね」
--この貴重な建物の今後は?
「まあ、なるようになるでしょう(笑)。東京の建築家さんとかからは移築したいとか色々な申し出もあるけど、現実的には難しいと思う。これから決めることやけど、まあ潰して更地になるやろね。煙突が倒れてきて迷惑かけてもあかんしね」
--名残惜しくはないですか。
「中学生のころから手伝い始めて60年、途中いろんなことがありましたけど、続けてこられたことはよかったなあと思いますね。常連さんには申し訳ない思いもあるし、閉めるとなったら寂しい思いもあるけど、好きなことやってきたから満足ですわな」
◇ ◇
1世紀近くに渡り京都人のやすらぎの場所であった錦湯。またひとつ京都の名所がなくなることに寂しい思いは尽きないが、店主の顔にはやりきったという自負がみえる。錦湯、ありがとう。
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