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Wednesday, May 4, 2022

【フィアット 500C ドルチェヴィータ 新型試乗】ジャーナリスト的目線だと不満だらけだが…中村孝仁 - レスポンス

個人的な話で恐縮だが、私は日頃の足車の他に、趣味で50年以上が経過した旧車を持っている。こいつ、今時のクルマと違うからエンジンをかけることから一苦労する。

古い車は味わいがあって良いのだが、いざ動かすとなるとなかなか苦労が伴うし、いつ止まるかという精神的なストレスも伴う。そこへ行くと現代のクルマは全く持って何も考えずにエンジンもかかるし、そもそも止まる心配なんてほぼ無し。それにスムーズに動くしエアコンが付いているから快適だ。

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が、しかしである。中にはそうでもないクルマもある。フィアット『500』である。至って快適という点、止まる心配なしという点。これは激しく同意なのだが、他の現代車と比べてスムーズかというと疑問符が付くし、多くの点で本当の意味での現代のクルマと同列には語れない何かを持っている。

つい先日このフィアット500の電気自動車が登場した。その名もフィアット『500e』。その500eに試乗した時、そのあまりの現代風な乗り味に少々びっくりした。とにかくスムーズだし、快適だし、走る、曲がる、止まるのメリハリがきちっとしている。形はガソリンモデルほとんど一緒。というわけで、そのガソリン車と乗り比べてみようということから、今回改めて借り出したという次第である。

ジャーナリスト的目線で見ると不満だらけだが

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その名も「ドルチェヴィータ」。相当歳の人ならイタリアの有名な映画のタイトルだとわかる。これが若い人だと漫画のタイトルとして認知されているかもしれないが、このドルチェヴィータ、元々は限定車として出たモデルだったが、いつの間にやらレギュラーモデルに取って代わっていた。そもそもこの500、デビューしたのが2007年だからすでに15年の歳月が流れている。色々と手を変え品を変えて改良が施されているものの、基本は何も変わらず作り続けられている。しかもこれだけの年月が経つ今もその販売が伸びているという恐るべきモデルなのだ。

そんなドルチェヴィータに乗ってみると、まあ、ジャーナリスト的目線で見ると不満だらけである。勿論どのように比べるかというところが問題だが、わかり易く比べるとしたら同じ形をしている500eなのではないかと思うのだが、あちらは電気だからそもそも動力源が違う。でも、不満点はというと「デュオロジック」の名を持ついわゆるシングルクラッチのセミオートマチック機構だ。

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ちょっと速く走ろうとすると、予想しないところでトルク変動があって体が前後に揺すられるし、さすがに2気筒エンジンは決して振動が皆無というわけにはいかず、室内のリアビューミラーは加速時はほぼ後ろのクルマを特定することができないほど見事に揺れる。もっともこれは個体差があるかもしれない。新たにクルーズコントロールが装備されたそうだが、ACCではないので、車間距離を保つことはできず、使い勝手が良いかと言われればNOである。乗り味は全体のボディ剛性の低さなども手伝って、まさに冒頭のべた私の50年物の旧車とそう変わるところはない。つまり、全体として苦労を伴う旧車と最新の現代車との端境に棲息しているクルマ…という印象なのである。

フィアット500がなぜ人気なのかを考える

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そんな機構的には決して褒められたクルマではない500が何故人気なのか。これは偏にほのぼのとした雰囲気を持ったクルマで、スローライフに向いているからではないかと思うわけである。決して速くもないし、スムーズでもない。荷物がたくさん積めるわけでもないし、4人が快適に移動できるわけでもないが、1950年代に誕生した元祖チンクェチェント(500)のデザインエレメントを現代風にアレンジしたその姿は何故か心に刺さる。今回のドルチェヴィータは「500C」、即ちキャンバストップでオープンにすることが可能だ。それも屋根部分だけを開けたり、リアウィンドーもたたんで開放的な雰囲気を味わったり、さらにはドライバーズシートの上だけを開けておくことも可能だった。

今回は移動のタイミングが多かったこともあり、1週間で750kmほど走った。やはり長距離はさすがに疲れるが、そのスピードは2気筒舐めんなよ~と言いたくなるほど活発に走ってくれるので、高速道路の追い越し車線を我が物顔はお茶の子さいさい。やはり軽自動車並のサイズではあるが、高速走行はこちらの方が圧倒的に上である。デュオロジックも変速タイミングを測ってアクセルを戻してやるとスムーズな変速ができることもわかった。ただ、ちょっとしたのぼり勾配の坂で止まった時など、クルマがそれを坂と認識しないと、発進の際大きく後ろに下がるので、結構怖い思いもする。坂道発進はサイドブレーキをかけておいた方が安心だった。

ネオクラシックの雰囲気も“込み”で楽しむ

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というわけでこのクルマには古き良き時代の名残がたくさんあったり、そのデザイン、その動きなどにネオクラシックの雰囲気を感じてしまうのだが、このクルマのオーナーはそんなことはすべて織り込み済みで、これを楽しんでいるのだろう。

いずれ最新の安全デバイスをつけなくてはならない日がやってくると思うので、このクルマを新車で楽しめる日はそう長くはないかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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