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Tuesday, December 28, 2021

「551蓬莱の豚まん」で有名な蓬莱の社名から命名!1歳の誕生日を迎えた天王寺動物園のホッキョクグマ・ホウちゃん|@DIME アットダイム - @DIME

天王寺動物園のホウちゃん、初めての誕生日を迎える

はじめまして、動物園・水族館・植物園を専門に撮影取材している動物園写真家の阪田真一(写真家/ライター)です。

以前「大阪のど真ん中に鎮座する天王寺動物園の動物たちとの新たな100年がスタート」で、ホッキョクグマの親子を少し紹介したのだが。この冬、ホッキョクグマの赤ちゃんであるホウちゃん(雌)が1歳の誕生日を迎えた。

今回はその誕生日イベントや、前回の記事ではお伝え出来なかった親子の様子。さらにはホウちゃんの研究観察を続けていた研究者や、その研究室のことを紹介しよう。

天王寺動物園の人気者であるホッキョクグマ親子

20201125日水曜日 最高気温15.0度 最低気温9.9度 来園者は少し薄手の上着を羽織って見てまわるような気候の中、ゴーゴ(雄:15歳)とイッちゃん(雌:6歳)の間にホウちゃん(雌)は生まれた。

このとき双子で生まれたのだが、片方は生後間もなく死亡したのだそうだ。ホッキョクグマの赤ちゃんは双子で生まれた場合、片方がうまく生育しないこともよくあるのだとか。残念ではあるが、1頭でも元気に育っていることは喜ばしいことに変わりない。

野生では、ホッキョクグマの父親は子育てをせず、一緒に過ごすこともないようだ。ホウちゃんが生まれてしばらくはゴーゴが展示場に出ていたが、20213月お父さんのゴーゴは繁殖目的で、よこはま動物園ズーラシアへ転出した。現在、お母さんのイッちゃんと2頭での展示となっている。

・親子だから共感出来る、イッちゃんとホウちゃんの親子の動向に癒される

休日の動物園には、イッちゃんのように子育てをしているお父さんお母さんたちが、お子さん連れで来園している。

バタバタと走り回りおもちゃを散らかすホウちゃんの元気な様子や、その走り回るわが子を横目にイッちゃんが時折見せる自分だけの時間を過ごす姿など、その行動の多くに共通点を見つけてホッコリさせられることも多いのではないだろうか。

・ホッキョクグマだって叱るときは叱る

この日、ホウちゃんはイッちゃんが遊んでいた赤いブイ(漁で浮きに使われる道具)を、イッちゃんの目を盗んでプールへ落としてしまった。おそらくプールへ投げ入れてはいけなかったのだろう。

イッちゃんは落とされた赤いブイをプールから抱え上げ、陸に上がる。恐る恐る近寄ってきたホウちゃんに「もぅ!」といわんばかりに走り寄って、逃げていくホウちゃんのお尻を「ガブッ」と噛んだのだ。

その追いかける姿も追いかけられている姿も、どこかコミカルでいてどこか見覚えのなるような光景で、ホッキョクグマでも、わが子を叱ることがあるということに驚かされた。

ホウちゃんは遊びたい盛りでとても器用

最近は気温も低くなりプールへの飛び込みも少し減ったようだが、それでもプールが大好きなホウちゃん。

どうやら、いろんな飛び込み方を研究している様子。

日中はホッキョクグマファンの方から寄贈された玩具や、飼育員さんが投げ入れる工事用のウサギさんを模ったボードなど、器用に使って遊んでいる姿が微笑ましい。

・ホウちゃんは飛び込み盛り

取材中は、何度も何度もプールへ飛び込むシーンを見ることが出来た。飛び込む姿もなかなか様になっている。何かをめがけて飛び込むことが多いように見受けられる。また、飛び込んだ後も背泳ぎで戻ってくるなど、泳ぐということも得意な様子でプールを満喫している姿がとても幸せそうだ。

・どんなおもちゃでも遊び方を発明するホウちゃん

お父さんのゴーゴや、お母さんのイッちゃんもそれぞれ玩具を使った遊びはしていた。

しかし遊びたい盛りのホウちゃんの遊びは器用で芸人レベル。見ている人がいると、こちらにその玩具を見せてくれることもある。

たまに落としちゃうこともあるけれど、その「あっ!おちた!」って間の何ともいえない表情が可愛らしいのだ。

551の蓬莱さんからの誕生日プレゼントは『鮭』と『鮭』

1125日の誕生日を目前に控えた、1122日月曜日の休園日(雨)。この日、ホッキョクグマのスポンサーである、「551の蓬莱」様から誕生日プレゼントとして大きくて立派な『鮭』2本が届いた。

ホウちゃんと、誕生日の近いイッちゃん(20131211日にロシアのノボシビルスク動物園生まれ)と合同誕生会を開催。頂いた『鮭』をプレゼントする様子を天王寺動物園の公式YouTubeでライブ配信されたのだ。そのアーカイブがこちら。

・雨の中のライブ配信と配信後のホッキョクグマ親子の様子

この日はあいにくの雨。傘を差した数人のスタッフさんが見守る中、ライブ配信が開始された。

クマ担当飼育員の油家謙二さんが案内役となりホッキョクグマ親子の様子や、プレゼントに関する説明がされた。

カッチコッチに凍った『鮭』は一度、水で濡らして直前に少し解凍したのだが、やはり硬かったようだ。

吊るされたブイにジャンプしてはたくことでおちる仕掛けを使ってプレゼントする企画ではあったのだが、ホウちゃんでは落とすことは出来ず、イッちゃんのスーパージャンプでブイをはたいたのだが、かなり重量のある立派な『鮭』であったため、またもや落とすことは出来なかった。結局、飼育員の油家さんの手助けにより落下させた。このとき真下で様子をうかがっていたイッちゃんが先に『鮭』をゲットした。

イッちゃんがゲットした『鮭』を咥えて戻ってきたところに、ホウちゃんが付いてまわる。そしてイッちゃんが食べていた『鮭』を、イッちゃんがよそ見をした隙にホウちゃんが持ち去る。さっきまで目の前にあった『鮭』が忽然と消えたことにキョトンとするイッちゃん。ホウちゃんは嬉しそうに『鮭』を咥えていた。

そこで、『鮭』は2本目が投入された。またもやイッちゃんがはたいたのだが落下せず、飼育員の油家さんの手助けにより落下した『鮭』をイッちゃんがゲット。今度はホウちゃんとは離れた位置で静かに食していた。一方ホウちゃんはというと、あっちで食べたりこっちで食べたりと食べ歩きスタイルで『鮭』を満喫している様子であった。

イッちゃんは『鮭』を食べ終えるとホウちゃんの元へ歩みよっていた。ホウちゃんはまだまだ『鮭』を堪能中。

「まだ、食べているの?」と声をかけているのかな。最後は仲良く残りの『鮭』を食べていた。これはライブ配信が終わった後の仲良し親子の光景だ。

コロナ禍の休園中も通い、ホウちゃんの行動研究

20211121日日曜日、「TENNOJI ZOO MUSEUM」(てんのうじズーミュージアム)内の多目的ホール「だいしんワクワクホール」で、「どうぶつ とっておき話 特別編」が開催された。

その中で『大阪大学 人間科学研究科 比較行動学研究分野』在籍の山本誉さんの研究報告会がおこなわれた。

・ホウちゃんの「ささ鳴き」研究発表会

その研究発表の内容は、ホウちゃんの「ささ鳴き」についてでした。

では「ささ鳴き」とはなんだろう。まずは次の天王寺動物園の公式YouTubeチャンネルで聞いてみて欲しい。

お聞きいただけただろうか、地響きのような低い音声。

これはクマ科の子供が母親の乳首を吸うときに発せられる授乳の指標とされているそうだ。

これまでに、クマ科動物8種のうちヒグマ、マレーグマ、ツキノワグマなどジャイアントパンダをのぞく7種で「ささ鳴き」が確認されているという。

今回の研究報告会ではその研究成果について、クイズ形式で来園者へ分かりやすく伝える場面もあった。

ここで驚くのは、天王寺動物園の飼育員さんやスタッフさんが授業参観のような形でこの報告会を見守っていたことである。これは同園が進めている「動物園との調査研究」の取り組みに対して園で働く飼育員やスタッフの関心が高いということの表れではないだろうか。

天王寺動物園では、来園者への「動物に関する学びの場」を提供するだけではなく、研究機関や研究者との共同研究をおこなう「動物園との調査研究」にも力を入れている。調査研究について積極的に研究者への働き掛けもおこなっているので興味のある研究機関、研究者は問い合わせてみて欲しい。

※ 天王寺動物園「動物園との調査研究」LINK

・ホウちゃんの密着フォトブック

休園期間中も天王寺動物園に通い、行動観察を続けた山本さん。その観察の合間に撮りためたホッキョクグマ親子の日常の写真を、3冊のフォトブックとして自ら編集し天王寺動物園へ寄贈したのだそうだ。それに感激した天王寺動物園スタッフは、同園のグッズや看板などを手掛ける、株式会社キッズプロモーションを通じて『天王寺動物園ホッキョクグマのホウちゃん1さい、おめでとう!』フォトブックを完成させることとなった。

内容は休園期間中、誰もが見ることの出来なかった貴重なホウちゃんの成長記録であり、イッちゃんの子育て記録でもある。日々観察し続けたからこその内容とボリュームである。

(左:担当飼育員 油家謙二さん、中央:研究者 山本誉さん、右:獣医 佐野祐介さん)

※ 【公式】『ホッキョクグマのホウちゃん』フォトブック@発売中 TwitterLINK

※ ホッキョクグマのホウちゃんフォトブックストア https://tennojizoo-houchanpb.stores.jp

※ 株式会社キッズプロモーション 関西支社 LINK

動物の行動を比較研究し学びを共有する

天王寺動物園との共同研究をおこなった、山本さんが所属する研究室は大阪大学の人間科学研究科 比較行動学研究分野である。

・「大阪大学 人間科学研究科 比較行動学研究分野」とは

この研究室では、人間科学博士 山田一憲さんが講師となり学生の指導にあたっている。

気になるのはその研究内容であるが、様々な環境で暮らす動物たちの行動を観察記録し、それぞれがその行動においてどのような役割を持つのか。またそれはどんな進化の過程を経てきたのかを考える研究をしているとのこと。(写真は週一回開かれるゼミの集まりの様子。黄色いパーカーの男性が山田さんである。奥に研究者の山本さんもいる)

その活動についてであるが、観察対象としては「集団で暮らす野生のニホンザル」と「動物園で暮らす野生動物たち」である。注目すべきは動物たちの子育て、成長・発達、母子関係、遊び友達との関係、血縁、群れの中での順位、ケンカ、仲直りの行動、老化など行動観察をおこない研究している。ときには遺伝子、ホルモンなどの生物学的指標を用いて動物たちの生きている過程を紐解いていくことを目指して研究している。

研究室入り口には、これまで多くの動物園での共同研究の成果がポスターにまとめられ展示されている。このポスターはお世話になった園にも送られ、展示されている。

ここで紹介した内容は研究室のごく一部でしかない。興味がある人は是非研究室のWEBサイトを見てもらいたい。

大阪大学 人間科学部 比較行動学研究分野 (LINK)

これからの成長を見守りたい

1歳の誕生日を迎えたホウちゃん。ホッキョクグマの授乳期は2年以上と、人と比べてとても長い。

まだ1年程はお母さんに甘える仕草を見ることが出来るだろう。

いつかは他園でお母さんになる日が来ると思うと、なぜか今から胸が熱くなり前倒しで感慨深くなってしまう。

これからも、天王寺動物園のホッキョクグマの親子の姿を見守っていきたい。

【取材協力】

地方独立行政法人天王寺動物園 (HP

543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1108

TEL: 06-6771-8401

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大阪大学 人間科学部 比較行動学研究分野 (HP

565-0871 大阪府吹田市山田丘1(吹田キャンパス)人間科学部 別館

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【写真/記事】

動物園写真家 阪田 真一 (HP

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