宮城県角田市の業務用食品店「マルセン」は、土蔵が店の建物内にある変わった構造だ。東日本大震災にも耐えたこの蔵には、幸運を呼ぶ「座敷わらしがいる」とも言われ、国内外から訪問客がやってくる。蔵は確かに、店主夫妻に幸せをもたらしているようだ。
土蔵はコーヒー豆や紙コップなどが並ぶ店の奥にあり、買い物客は中に入ることができる。土蔵の2階にはおもちゃやぬいぐるみ、子供用の服がずらり。どれもお客さんたちが「座敷わらしに」と置いていったものという。
蔵は1876(明治9)年ごろに建てられた。「マルセン」の初代店主が元の所有者から買い取り、蔵の前に店を作った。30年ほど前、2代目の高橋克裕さん(71)が店の伝統をアピールするため、蔵を覆うように店を建て替えた。
その後、克裕さんはみどりさん(62)と2000年に結婚。二人三脚の経営が始まった。
震度6弱、商品は散乱しても建物無傷
11年の東日本大震災で、角田市では震度6弱を観測。店にいたみどりさんは、コーヒー豆の真空パック機を必死で押さえた。床には割れたジャムのビンが散乱し、商品棚は崩れた。それでも、蔵の屋根瓦は1枚も落ちず、壁にはヒビも入らなかった。
その日の夜。片付けに疲れた高橋さん夫婦の自宅に、市役所の職員がやって来て「市民のために明日からも店を開けて欲しい」。高橋さん夫婦は停電した店内を懐中電灯で照らしながら、翌日から店を再開。沿岸部の山元町から歩いて来た客もいた。
その翌年。テレビ局の取材でサンドウィッチマンの2人がやって来た。震災で被害が出なかった蔵が「パワースポット」と聞きつけてのことだった。番組の影響で「マルセンの蔵は幸運を呼ぶ」とのうわさが広まり、店に来る人もだんだん増えた。
「蔵に座敷わらしがいる」と、夫妻が初めて聞いたのは17年。仙台から来た会社員の男性がお菓子とジュースを手に「先日来店したとき、蔵にいる座敷わらしに『お菓子を持ってきて』と言われた」と話した。
夫妻は驚いたが、その後も「座敷わらしに」とおもちゃを持って来たりする客が続いた。座敷わらしが幸運を呼ぶのなら、お客さんにも幸せをお裾分けできれば――。夫妻は3年前に蔵の補強をし、買い物客向けに内部を公開することに。
座敷わらしに会おうと、これまでに県内はもちろん、愛知や北海道、ドイツなどからも来客があった。「おかげ様でいいことがありました」と再び来店し、お礼のおもちゃを置いていく人も多いという。
高橋さん夫妻は座敷わらしの姿を直接見たことがないというが、「お客さんに幸せを運んでくれた」と感謝している。克裕さんは「座敷わらしのおかげで世界中の人に出会えた。まさか自分にこんな不思議なことが起こるとは」。みどりさんも「震災後もお店を続けられたのは、座敷わらしのおかげかも知れませんね」と話す。(申知仁)
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確かに
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