土偶のモチーフは「植物」という仮説
今から1万6500年前から2350年前までの縄文時代における人々の生活や文化については、考古学研究の発展により解明が進んだものの、いまだに多くの謎が残されている。
とくに縄文文化の象徴の一つである「土偶」については、何をかたどったものなのか、様々な説があるものの確証を得られていないのが現状だ。
古代の謎への「新発見」が注目されベストセラーとなった本書では、現代までに全国で2万点近くが発見されている縄文時代の土偶について、人類学、考古学などの実証研究により、その正体を明らかにする。
著者の仮説では、土偶は「植物」をモチーフとして作られており、縄文人たちの生命を育む主要な食用植物の精霊を祀る呪術的儀礼に用いられたものだという。たとえば、土偶の代表格であり、ゴーグルをつけたような大きな眼が特徴的な「遮光器土偶」は、サトイモをかたどったものと説明されている。
著者は独立研究者として活動する人類学者で、東京大学で宗教学を学んだ後、東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻博士課程満期退学(2019年)。専門は宗教人類学。著書に『輪廻転生―<私>をつなぐ生まれ変わりの物語』(講談社現代新書)などがある。
序.人類学の冒険
1.土偶プロファイリング1 ハート形土偶
2.土偶プロファイリング2 合掌土偶・中空土偶
3.土偶プロファイリング3 椎塚土偶(山形土偶)
4.土偶プロファイリング4 みみずく土偶
5.土偶プロファイリング5 星形土偶
6.土偶プロファイリング6 縄文のビーナス(カモメライン土偶)
7.土偶プロファイリング7 結髪土偶
8.土偶プロファイリング8 刺突文土偶
9.土偶プロファイリング9 遮光器土偶
10.土偶の解読を終えて
文字記録がない縄文時代を知る「情報遺産」
神話は小説のような創作物ではない。人類学が教えるところは、神話において語られようとしているのはむしろ“世界の現実”であるということだ。古代神話であれば、それは人類が「自意識」というものを獲得し、われわれを取り巻くこの世界を有意味なものとして解釈し始めた頃の、いわば太古の認知の痕跡なのである。
縄文人も神話を保有していたことは確実である。しかし、縄文人は文字を使用しなかった。つまり縄文人の神話は文字記録として残っていない。
しかし、(縄文時代には)忘れてはならない重要な「情報遺産」が存在している。そう、土偶である。縄文時代に造られたあの奇怪なフィギュアは、儀礼的な呪物、つまり呪術で使う道具として使用されたものに違いない。であれば、そこには縄文人の精神性が色濃く反映しているはずである。
土偶には二つの大きな謎がある。一つは「土偶は何をかたどっているのか」というモチーフの問題。ざっとみただけでも、妊娠女性説、地母神説、目に見えない精霊説、はたまた宇宙人説に至るまで、考古学の内外からじつに多様な意見が開陳されていることがわかった。そしてもう一つが「土偶はどのように使用されたのか」という用途の問題。豊穣のお祈り、安産祈願のお守り、病気治療など、こちらも様々な意見が主張されてきたようだ。
からの記事と詳細 ( 「貯蔵中のサトイモを鋭い眼光で警護」人類学者がたどり着いた"あの有名な土偶の正体" "頭部と親イモの形が完全に一致" - PRESIDENT Online )
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