
本で読んだだけで、お目にかかったことはないが、難読で有名な名字の方がいる。小鳥遊(たかなし)さん、月見里(やまなし)さん、栗花落(ついり)さんたちだ。小鳥が遊ぶのはタカがいないからで「たかなし」、月がきれいに見える里は「やまなし」、クリの花が落ちる梅雨の入りで「ついり」が、読みの由来とも言われている▼なぞかけを思わせて、風情もある漢字の読みは、名字ではないが、万葉集のころからあるそうだ。本来の音を離れ、さまざまな読み方を許容する言語もおそらく珍しい。そこに情緒が宿ることもある、言霊の国の言葉の面白さ、豊かさなのかもしれない▼名前の多様な読み方は、デジタル化の世の中とはあまり相性がよくないようである。法相の諮問機関が、漢字で記載されている戸籍の氏名に読み仮名を載せるための検討を始める。読みがあるほうが、事務の効率化には、いいらしい▼読みの欄を設けるだけなら、簡単な話にも思えるが、議論はいわゆるキラキラネームの問題にまで及ぶそうである▼本来の読み方を離れ、読むのが難しい名前の中には、たしかに違和感を覚える名がある。一方で、情緒を感じさせる名もあろう▼徒然草で吉田兼好は、人の名に見慣れない文字を使う風潮を<益なき事>とつづっている。古くからあった話なのかもしれない。なにかでうまく線引きできるのか。加減が難しい現代の名前の問題である。
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