[ロンドン 14日 ロイター] - ファンドマネジャーは、ロシアとウクライナに対する投資圧縮を続けている。長年にわたって緊張関係にある両国が最終的に直接的な戦争に本格突入し、ウクライナ経済が壊滅、ロシアがさらなる制裁に苦しむのではないかとの不安が背景にある。
足元では、ロシアがウクライナ国境付近に2014年の一方的なクリミア編入以降で最大規模の兵力を展開し、ロシア政府は妥協を排するメッセージを発信している。そうした点から市場のポジションの警戒度は、まだ不十分とみる投資家もいる。
ブルーベイ・アセット・マネジメントのシニア新興国市場ソブリンストラテジスト、ティム・アッシュ氏は「市場参加者は非常に楽観的だ」と指摘する。
同氏は14年(のクリミア編入時)を含めて33年間、ウクライナをカバーしてきた。しかし、今の状況はかなり深刻に見えるという。「市場の反応がもう少し踏み込んでも良さそうなのに、そうなっていない様子に驚いている」と話した。
ロシアとウクライナ間の緊張が激化し、ロシアに米国などからの新たな制裁がすぐにも発動されるかもしれないとの懸念は、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領の13日の電話会談である程度和らいだ形だ。バイデン氏は対面での首脳会談を提案した。米国がウクライナ領土の一体性に関与するとも表明し、ロシア側をけん制した。
アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(運用資産約6400億ドル)は直近の展開より前に、既に一部のルーブル建て投資を削減していた。ただ、現在もロシアとウクライナの債券保有ポジションは維持している。
アバディーンのポートフォリオマネジャー、ビクター・スザボ氏は「確かに緊張がエスカレートしていくのを見るのは、好ましい材料ではない。しかし、ロシアとウクライナ双方にとって軍事的な全面衝突は背負うリスクがかなり大きい以上、そういう事態にはならないと思う。ロシアにとって(ウクライナの)東部地域を占領し、ロシア領として再構築する事態は、金銭や人命、そして制裁されるという見地から、とてつもない代償を払うことになる、とわれわれは承知している」と述べた。
両国の資産価格は最近数週間、緊張の高まりで一定程度の売りを浴びたとはいえ、全面戦争の可能性について現状では織り込んでいないように見える。
ルーブルは4月14日に2週間ぶりの高値に戻り、約12カ月ぶりの安値を付けていたロシアのドル建てソブリン債も持ち直した。バイデン氏とプーチン氏が電話会談したことで、米国の対ロシア制裁が現実味を帯びる可能性が、今のところは後退したと投資家が受け止めたためだ。
ウクライナの外債とGDP連動ワラント債(経済成長が一定水準を超えると投資家への返済額が上乗せされる仕組み)も、一時は約5カ月ぶりの安値に沈んでいた。だが、その後は2週間ぶりの高水準まで値を戻した。
両国の5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、直近でロシア勢力とウクライナの軍事衝突が起きた15年初めに記録した水準を、大きく下回っている。
<ウクライナの弱み>
もちろん投資家の間で、リスク量を減らす動きは出ている。
JPモルガンは4月上旬、ロシアの自国通貨建て債券とルーブルの投資判断を「オーバーウエート」から「マーケットウエート」に引き下げた。
トリウム・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ピーター・キスラー氏は「(ロシアに対する)ショートポジションの構築を始めた。今回の状況が改善に向かう前にまだ、さらなる悪化があると想定している」と明かした。
ジュピター・アセット・マネジメントの新興国市場債アシスタント・ファンドマネジャーのレザ・カリム氏によると、同社は保有していたウクライナのGDP連動ワラント債を数週間前に処分した。これはウクライナ国境の不穏な情勢が、最初に報じられたタイミングに当たる。
ウクライナの自国通貨建て債市場では、外国人投資家の保有高が3月終盤以降じりじりと減少している。同国はロシアに比べて経済規模がずっと小さいだけでなく、外貨準備も相対的に乏しい。財政基盤ももろく、経常収支も不安定で、債務も多いことから、ロシア勢力との対立が再び激しくなれば経済的な痛手を受けやすい。
ロシアとの緊張に加え、最近は新型コロナウイルスの感染者が急増しているため、ウクライナ経済の回復とGDPワラント債投資家の期待は、雲行きが怪しくなっている。
15年の債務再編の一環として発行されたGDPワラント債は、19年の3.2%という成長率に基づいて今年5月に第1回目の約4000億ドルの支払いが行われることになっている。
ただ、ウクライナ財務省は、今年に計画した借り入れは順調に進んでおり、GDPワラント債を含めて債務返済の資金繰りリスクは視野に入っていないと主張。ジュピターのカリム氏も「政治的リスクを別にすれば、実際のところウクライナ国内の状況はかなりしっかりしている」と認めた。
モルガン・スタンレーはウクライナの24年償還と26年償還の外債については、最近のGDPワラント債の値下がりを引き合いに出し、「買い場」だとの見方を示している。
<ロシアの弱み>
ロシア投資のリスクは、米国などからの制裁だ。これはロシア資産の投資家にとっておなじみの悩みと言える。
バイデン政権がロシアによる米大統領選介入やサイバー攻撃への報復で制裁を科すとの観測が強まる中で、ジュピターやブルーベイをはじめとする多くの資産運用会社はここ数カ月、守りに回るためのポジションを築いてきた。
市場関係者によると、ロシアがウクライナ領内に侵攻すれば、米国が制裁発動するリスクはさらに増大する。制裁措置は主要ロシア企業に対する資金調達制限から、ルーブル建て国債(OFZ)への投資規制まで、さまざまな選択肢が考えられる。米政府は既に2014年以降、自国の投資家がロシアのドル建て新発債を購入するのを禁止している。
OFZの外国人保有比率は今年に入って低下し、足元は5年ぶりの低い水準だ。
追加制裁措置でロシア国内の資金調達が難しくなる面は確かにあるが、一番大きなリスクは、同国の長期的な経済成長の減速かもしれない。
ブルーベイのアッシュ氏は「これはロシアの経済成長と生活水準が、次第に衰退していくという話だ。原油価格が1バレル=60─70ドル近辺で推移したとしても、そして、いくらロシアの財政基盤が強固だといっても、潜在成長率は恐らく2%をもう割り込んでいる。なぜなら、外国人もロシア人も投資をしていないからだ。それは多分、地政学問題を巡る不安に起因している」と指摘した。
(Tom Arnold記者、Natalia Zinets記者、Karin Strohecker記者)
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確かに
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