Pages

Tuesday, February 23, 2021

デッサン授業で巡る、パリの隠れた名スポット【夢見るパリ】 | コラム | カルチャー & ライフ - 株式会社三栄

私は今年、パリに住み始めて10年目になります。

2011年、パリに来た当初はエコール ド ルーブルの聴講生となり美術史を専攻しました。テストを受けて入学する大学生とは別に、聴講生として大学と同じような内容の授業をルーブル美術館の建物の一角で聴講することができます。

日本人に一度も会うことはなく、ほぼフランス人。若い方から定年過ぎの方まで受講生の年齢層は様々で、数百人入る講堂はいつもいっぱいでした。

歴史あるパリの建物や美術に日々対面する機会が多いフランス人は、その歴史を知りたいと思う知的好奇心が旺盛なのも当然かもしれません。

ある時、半年のデッサンの授業があると知り申し込みに行ったところ、既に定員オーバーということでしたが運良く私も追加してもらえました。

毎週あらゆる美術館に行って周りを気にせず巨匠の絵画や彫刻のデッサンを描けるのは私にとって理想的でした。

ルーブル美術館やオルセー美術館では重要な絵画を教えてもらい歴史の説明を聞いたり、彫刻の模写、人の顔のデッサン練習や、歩いている人を時間を決めて描くという練習をしました。

動物園に行った時はフラミンゴや鳥、ゴリラなどを観察してデッサンしました。飛行機や宇宙に関する博物館では、飛行機が発明される前の乗り物や巨大なスペースシャトルを見ながらデッサン。

先生は生徒たちが描いたものを一切修正しないのが印象的でした。

ある時、デッサン練習の一環で駅に行った時のこと。

駅の地下の迷路みたいな通路を進んだ先に、大量の電動式ミニ電車が所狭しと並べられていて、その周りには精密に手作りされた山や村や人の模型も並べられていました。鉄道マニアの定年を過ぎたムッシューたちがその電車を機械操作していて驚きました。

そのほか、オペラ座内の普段は入れない場所や、教会の中の古い彫刻、図書館内の見るべき美しい装飾を見たり、さらには印象派の画家達が過ごした場所や当時の有名な建築を案内してもらったりと、フランス人も知らないパリを見せてもらいました。今思うととても有意義な時間だったなぁと懐かしく思い出されます。

そして私が大好きなフランス人画家、ギュスターヴ モロー美術館にも授業で行く機会がありました。こちらは1852年からモローの住居兼アトリエだった場所で、壁一面の作品を見渡せる素敵な螺旋階段が有名です。

ギュスターヴ モロー(1826-1898)は印象派の画家たちと同じ時代に生きて、彼は他の画家たちとは一線を画した作風を確立しました。奥深いギリシャ神話や聖書をテーマにした独特で幻想的な世界に私はいつも引き込まれてしまいます。彼は作品を描く前にたくさんの習作をしていて、それが一つ一つ額に入れられ壁側に保管されているので誰でも見ることができます。

全ての作品が見応えあるもので、それに調和している額縁もまた素晴らしく、ここで私は時間を忘れて模写しました。
こちらの邸宅美術館は人が少なく静かで、モローの世界に思い存分浸れます。

当時は行くところ、何処もかしこも驚きの連続で新鮮でした。

ガイドブックに載っている場所は最初の一年でほぼ行きましたが、まだ私の知らないパリも、再訪したい場所もいっぱいあります。

text:竹内 仁海

パリ在住8年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。

Instagram:@melodiesgraphiques

Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細 ( デッサン授業で巡る、パリの隠れた名スポット【夢見るパリ】 | コラム | カルチャー & ライフ - 株式会社三栄 )
https://ift.tt/2P6lEWG

No comments:

Post a Comment